注目ポイント
2021年の世論調査によると、インドの人口の80%がヒンドゥー教を信仰しており、信者の大多数が、インド人はヒンドゥー教を信仰し、ヒンディー語を話すべきだと考えている。 よって国名を英語の「India」からヒンディー語の「Bharat」に変更することへの賛同も想像に難くない。 インドが「India」でなくなった場合、どのような影響があるのだろうか?
9月初旬にインドで主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開催された。主催国であるインド政府から各国首脳宛てに送られた夕食会招待状の名義は「インド大統領」ではなく「バーラト大統領」と記載されており、バーラトへの国名変更を示唆したものではないかと見られている。
インド与党のイデオロギーに大きな影響力を持つ極右派の指導者は、最近「当初、国名をインドと名付けたのは、英語を話す人が理解しやすいようにするためだけの理由であり、インドはバーラトと呼ばれなければならない」と公に発言した。
インド憲法にも「バーラト」の名称が記載されている
国家の名称は、通常憲法で規定されており、インドも例外ではない。インド憲法の第1条には「インド、すなわちバーラトは諸州の連邦である」と記されており、インドと並んでバーラトは正式な国名とされている。ただし、バーラトという言葉はインド憲法の第1条に1回出て来るのみで、憲法の中では基本的に「インド」が使われている。公用語における国名はヒンディー語ではバーラト、英語ではインドとなる。

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では、なぜ今、国名変更の動きが出ているのだろうか。
インドは200 年に渡るイギリスの植民地支配を経て、1947 年に独立を達成した。憲法を起草するにあたって、国名を決定する必要があったが、当時の一般的に使われていた国名はインド、バーラト、ヒンドゥスタンの 3つであった。
このうちインドという言葉は、インダス川を意味するサンスクリット語を英語にしたもので、インドのインダス川流域が古来より文化・商業の中心地と栄えてきたことに由来する。 バーラトもサンスクリット語で、その起源はさらに古く、2000年前の古典神話にまで遡り、南アジアのインド地域を指している。ヒンドゥスタンは、ヒンディー語が公用語のインド中北部地域のペルシア語名称である。
第二次世界大戦後、植民地支配から独立した多くの東南アジア諸国は、旧統治国がつけた国名を継続することを望まなかった。 たとえば、インドと同じくイギリスの植民地だったセイロンは、独立後にスリランカと改名された。独立当時、インド国内でも英語名 India に反対する勢力は有ったが、当時のインド制憲議会は最終的にインドを国名とし、バーラトを併記することを選択した。一方、ヒンドゥスタンは憲法には記載されず、地理用語として残った。
インドの「正式名称」は与党のイデオロギーによるもの