注目ポイント
9月、ミシガン州、アリゾナ州、ニューメキシコ州の知事が相次いで台湾を訪問した。 台湾と米国は近年、経済貿易交流が緊密化している。米国は台湾にとって中国に次ぐ第2位の貿易相手国であり、2022年の台湾と米国の二国間貿易額は1,356億ドル(約20兆2,044億円)に達した。
台湾の対米国投資の増加も近年最大となっている。2022年には前年比128.3%に達した。9月には経済部投資審査委員会がTSMC米国工場に対し45億ドル(約6705億円)の増資を承認するなど、今年の海外投資額は過去最高を記録した。
台湾と米国の産業協力は半導体にとどまらない。ニューメキシコ州はEV(電気自動車)産業の発展に前向きで、台湾のギアメーカー和大工業(ホタ・インダストリアル)と協力して工場を設立することになった。
台湾と米国の間には国交がなく、両国間の事務的交渉は米国在台湾協会(AIT)が担当しているが、近年、台湾と米国の間のビジネス交流が盛んになり、AITだけで対応しきれないほどの状況で、各州政府が台湾に事務所を開設するようになった。
これまでに15の州と1つの準州の政府が台湾に事務所を開設し、そのうち11州の事務所は過去5年間に開設されたものである。 来年の第 1 四半期までに、さらに 4 州が台湾に事務所を開設する予定である。
米国各州が台湾事務所を設立する理由は? 2018年と2021年に転機
台湾の美国州政府協会(ASOA)厳樹芬会長は、ニュースレンズの取材に対し、もともと台湾には米国の32の州政府が商業事務所を開設していたが、金融ショックと中国市場の台頭により次第に台湾から撤退し、中国、香港、シンガポールへと移転してしまい、一時は台湾に6事務所しか残っていなかった。 しかし、近年になって、再び米国各州の政府が台湾に事務所を開設している。厳会長によると、かつて米国州政府は主にヨーロッパ、日本、韓国に事務所を置いていたが、それらに代わって台湾が拠点になったという。厳会長は「それだけ台湾の存在が見逃せないものになっているということです」と述べた。
なぜ米国の州政府が台湾に注目しているのか? 厳会長によると、台湾は現在、地政学的にも地経学的にも優位な状態であるが、特に2018年と2021年という2つの重要な年があった。この2年が業界を刷新し、再編した年となった。
2018年の米中貿易戦争後、対中国の高率関税と輸出禁止措置により、各国が生産拠点を中国から他の国へ調整、移転する動きが促された。台湾企業も中国への投資配分を調整し、特に加工・輸出向けの製造業が、リスク分散のためにASEAN地域と米国に投資するようになった。
一方、バイデン米大統領は米国の製造業や労働者を支援するため、2021年に「バイ・アメリカン法(Buy American Act)」を実施した。連邦政府調達による米国製品の割合を高め、国内のサプライチェーン強化を推進するものであるが、米国は依然として主要部品の多くを海外供給に依存している。そのため米国の主要製造州は台湾企業による投資を誘致し、米国内での工場設立を期待しているのである。