注目ポイント
専門家によると、中国は経済的安定を生み出し、アジア太平洋地域での行動において信頼でき、透明性があり、オープンなプレーヤーとしてみなされる機会が数多くある一方、国家間の対立もあり、一つの岐路に差し掛かっているという。中国が未だにナショナリズムを主張し、台湾との統一を掲げるならば、この対立は、中国とより広範な世界経済に多大な損害を与えるとともに、甚大な人的被害をもたらすだろうとの見解を示した。
東南アジア影響同盟(SIA)主催の第1回「2023台湾地政学サミット」が9月11日に台北で開催され、ハーバード大学の国際学者が講演を行い、米中関係を1947年の米ソ冷戦と比較すべきではないこと、中国が世界に与える経済的影響は旧ソ連よりもはるかに大きく、中国を完全に切り離せば大きな代償を払うことになると指摘する一方、中国もまた選択を迫られており、ナショナリズムに基づく台湾統一を強行すれば、世界経済と中国経済が共に打撃を受けるだろうと指摘した。
午前中のセッションでは、今日の世界におけるアメリカと中国の影響力に焦点が当てられた。 馬英九前総統時代に台湾を訪問したハーバード大学ケネディ・スクールのジョセフ・ナイ教授は「米中間の競争的・対立的関係を「冷戦」と表現すべきではない」と強調した。
ナイ教授は、「冷戦」は両国の「長期的な競争」の状態を表すために使われる可能性があり、それが「米ソ間の対立が再現される可能性」を意味するのであれば、現代の米中関係にはそぐわないものであり、「冷戦」という言葉は使うべきではないと述べた。また、現在の米中間の緊張は、1914年の第一次世界大戦勃発前のヨーロッパの状況に近いとの見方も示した。
ナイ教授は「米ソの冷戦時代は、両国とも世界的な軍事の面で互いに大きく依存していたが、経済や国際社会の関係においては互いに依存していなかった。だが今日では、各国が中国経済から切り離されれば莫大な代償を支払うことになる」とし、この1点だけでも米ソ冷戦の時とは状況が異なると述べた。
ナイ教授は、米国と同盟国は、中国に対し「脱リスク」(de-risking)あるいは「選択的デカップリング」(selective decoupling)の手段を取ることが可能だが、経済的コストがかかるうえ、中国を貿易相手国として見ている国は米国を貿易相手国として見る国よりも多いため、他の同盟国に追随を呼びかけるのは難しいと警告。さらに、気候変動やパンデミックなどの問題に直面した場合、どの国も単独では戦うことは不可能なため、世界各国との関係は競争だけでなく、協力も必要だと述べた。
一方、ナイ教授はブリンケン米国務長官が米中関係を「競争的共存」あるいは「協力的競争」と表現するように、世界は中国とのあいだで協力と競争の関係に巻き込まれていると述べた。これは冷戦時代の対立とは別のものであり、冷戦時代よりも更に複雑な紛争解決の戦略が必要となる。