開票日カウントダウン

選挙ページへ

2023-10-17 政治・国際

韓国・梨泰院雑踏事故から1年、与野党攻防に波及 責任は現場に 自殺者も

© REUTERS 韓国のユン・ソクヨル大統領は、ソウル市庁舎外にある、梨泰院事件犠牲者の共同祭壇の前で追悼の意を表している=2022年11月3日

注目ポイント

韓国の梨泰院(イテウォン)で起きた雑踏事故から今月で1年を迎える。ハロウィーンを楽しむために集まった150人以上が犠牲となり、韓国中が悲しみに包まれた事故から私たちは何を学んだのだろうか。

2022年10月29日、韓国・ソウルの繁華街、梨泰院は多くの若者らでにぎわっていた。梨泰院はクラブやバー、世界各国の料理店が建ち並び、テレビドラマ「梨泰院クラス」の舞台でも知られる街だ。事故は同日夜に発生。幅3~5mほどの通りを人々が埋め尽くし、ぎゅうぎゅう詰めの状態から群衆雪崩が発生。事故後に自殺した1人を含む159人が死亡する大惨事になった。犠牲者の中には日本人2人も含まれていた。

 

悲しみの裏で激化した政治対立

事故を受け、韓国社会は悲しみに暮れた。事故から6日後の11月4日にはソウルで追悼式典が開かれ、同日付の韓国の通信社・聯合ニュースは、尹錫悦大統領が「国民の生命と安全に責任を負わなければならない大統領として悲痛で申し訳ない気持ちだ」と事件後初めて謝罪した様子を伝えた。事故から半年を迎えた今年4月には遺族らが追悼集会を開くなど、犠牲者の弔いは続いている。

その一方、政治の世界では事故の対応を巡って与野党の攻防が激化した。野党「共に民主党」は事故を尹大統領の辞任に結び付けようと四苦八苦。今年2月には警察を所管する李祥敏行政安全相に対する弾劾訴追案を野党3党で韓国国会に共同提出し、可決された。

審理は韓国憲法裁判所に持ち込まれ、李氏は職務停止になったものの、7月に憲法裁は罷免を認めない決定を言い渡した。ただ、野党側は諦めない。事故の真相調査と再発防止を目的とし、特別調査委員会の設置などを盛り込んだ「梨泰院惨事特別法」なる法案が6月末の国会本会議で採決・可決され、一定期間内に委員会での審査を終えるよう義務づけられる迅速処理案件(ファスト・トラック)に指定された。この動きに与党・国民の力は「事件を政治的問題に転嫁するものだ」などと反発している。

© Chris Jung via Reuters Connect

梨泰院事件の遺族、宗教関係者、市民対策協議会の議員らが与党のビルの前で叫び、事故の真相解明のための特別法の制定を要求=2023年8月24日、韓国・ソウル

 

事故の責任は現場に、自殺者も

事故の原因はどこに、誰にあるのか。事故直後、その追及の目は「現場」に向けられた。「事故は予見できたはず。どうして対策を打てなかったのか」「責任は手薄な警備に原因がある。警察は何をやっていたのか」と厳しい追及が相次ぎ、事件からまもなく実務者が相次いで自殺。

KBS WORLD JAPANESEの当時の報道によると、昨年11月11日、ハロウィーンの人出に関し、事前に人の多さからくる事故の危険性を指摘した報告書について、隠ぺいした疑いが持たれていた管轄警察署の情報係長が自宅で遺体で発見され、同じ日には事故負傷者らの心のケアなどや安全対策の緊急点検などを担当していたソウル市の安全支援課長も自宅で亡くなっているところを発見されたそして、「立場の弱い現場の実務者ばかり捜査している」という批判がオンラインを中心に高まり、最終的には隠ぺいの指示役とされた龍山警察署の情報課長が出頭する事態になったという

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい