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2023-10-07 政治・国際

元高校球児も台湾へ!海を越え 舞い戻り活躍する若者たち【谷井隆夫の台湾に進学しよう!】⑥

© オンライン面接の様子=2022年2月17日、筆者撮影

注目ポイント

海外留学する日本の大学生が減少するなか、学費や生活費が比較的安価で、かつ教育の質が高い台湾の大学への留学が注目されている。大阪府立高校の教頭、校長時代に修学旅行などを通じて台湾と関わり、退職後は「台湾進学ゼミ」(大阪市阿倍野区)代表となった谷井隆夫氏が、挫折を経験した若者が逆境を乗り越える道として台湾への進学を目指した実例や、留学から帰国後、世界を相手に活躍する実例を紹介する。日本の高校生の進学選択肢のひとつとして「台湾」がいかに魅力的であるか。雄飛を経験した若者たちの活躍で、それは今後も輝きを増しそうだ。

挫折経験した元高校球児の志

2022年8月初め、興国高校(大阪市天王寺区)野球部3年生の桑原光希(くわはら・こうき)君という男子生徒が入塾した。興国高校は大正時代の創立で間もなく校史100年を迎える伝統校だ。特に野球部は甲子園優勝経験もあり、2021年夏の大阪地区予選では最終的に大阪桐蔭高校に敗れて甲子園出場こそ逃したものの、激戦地で決勝まで駒を進めた名門校でもある。

桑原君は身長186cmの立派な体格を持ち、2年生の時に野手としてレギュラー入りを目指したが、ケガのためやむなくマネージャーに転向。その後の2年間は監督や選手を支える役割を担ってベンチ入りしていた元高校球児である。

高校時代。バッティング練習に打ち込む桑原光希さん(桑原光希さん提供)

 

攻守で活躍する中学3年生の夏の桑原さん(桑原光希さん提供)

 

その彼は、次のような二つの思いを抱いて台湾の大学への進学を希望していた。

まずひとつ目は、「将来プロスポーツ選手のトレーナーになりたい」という志である。

スポーツ選手がフィールドで輝くためには、その活躍を支える多くの人の存在が不可欠である。その中で、「最も専門的な役割の一つがトレーナーだから」というのだ。

日本統治時代の影響もあって西洋医学を発達させてきた台湾は、同時に中華文化圏の特徴として東洋医学が盛んな地でもある。

桑原君はよほど自身の将来について熟考したらしく、「大学では運動健康科学を専攻したい。しかし同時に鍼灸や指圧なども専門的に身につけたい。そんな一流トレーナーになるには台湾こそ最適だと判断しました」というのだ。

彼は私との進路面談を重ね、最終的に台北市立大学と、台中市にある国立体育運動大学の運動健康科学部をめざすことを決めた。

背番号13を背負って打席に立った中学3年の夏の桑原さん(桑原光希さん提供)

 

コロナ禍が家業直撃、弟たちの将来も配慮

彼が抱いていたもうひとつの思いは、「家族になるべく経済的負担をかけずに大学に進学したい」という決意である。

桑原君のご両親は、大阪市西成区で飲食店を経営しており、その店は料理の質の高さと接客の温かさで高い評価を得ていた。桑原君はこの店をよく手伝い、顧客からもかわいがられていた。ご両親にとってまさに相棒のような息子だったのである。ただ、コロナ禍の影響で、店の経営はこの3年間、大打撃を受けていた。

彼には中学生と小学生の弟がいる。弟ふたりは、頼りになる兄の背中をずっと追いかけて育ってきたようで、兄が中国語の勉強を始めたら、弟たちもわが台湾進学ゼミまで見学に来るほどに兄を慕っていた。桑原くんはまさに弟ふたりにとって第2の父親ともいえる存在だったのだろう。

家業の飲食店の経営状態や、やがて多額の教育費を必要とする弟ふたりの将来を考えたとき、自分がもし大学に進学するなら、学費が日本の大学の約半分で済む台湾の大学こそ唯一の道だと考えたのである。

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