注目ポイント
台南をこよなく愛する台湾在住の日本人デジタルマーケターが、台湾の気になるあれこれを調べてみるミニコラム。今回は10月26日に授賞式が開催される台湾最高峰のマンガの祭典「金漫奨(ゴールデン・コミック・アワード)」について。
台湾マンガ界の一大祭典
こんにちは、台湾大好きマーケターの津山です。今回は、台湾の優れたマンガ家や作品を表彰するマンガ賞「金漫奨」の開催が今月末に迫っているということで、その成り立ちや賞の内容を調べてみました。
「マンガといえば日本」だったのも今は昔。近年は国内から注目作品が続々登場している台湾マンガ界において、金漫奨は最高峰のマンガの祭典です。主催は台湾の文化部(文化省)、今年で14回目を迎えます。
金漫奨のオフィシャルサイトやSNSによると、同賞の前身は2003年に文化部が創設した「劇情漫畫獎」で、オリジナルの優れた長編作品を表彰する当時は数少ないマンガ賞だったそう。その後、2010年に国内マンガ界のさらなる発展のために「金漫獎(金漫奨)」が新設されると、マンガ産業や表現の変化に合わせてさまざまな賞が新設、再編され、2017年からは授賞式と連動した交流活動もスタート。
今では「GCA(Golden Comic Awards & Connection+)」を正式名称として、毎年秋になると台北市内で開かれる授賞式とともに、その前後にはカンファレンスやビジネスマッチング、展示などの関連イベントを実施。世界中からマンガ家や専門家、ファンが集まり、台湾のマンガ文化を盛り上げているそうです。
今年はデジタル作品にも門戸開放
金漫奨は公募制で、審査はマンガ家をはじめとしたクリエイターや研究者、有識者によって行われます。現在用意されている賞は以下の6つ。
- 漫畫新人獎(漫画新人賞):台湾で初めてマンガ作品を出版・公開した作者に贈られる賞
- 跨域應用獎(クロスメディア展開賞):台湾で出版・公開されたマンガ作品をドラマや舞台、ゲームなど他メディアに展開した作品に贈られる賞
- 漫畫編輯獎(漫画編集賞):台湾のマンガ作品の出版・公開やプロモーションに貢献した編集者に贈られる賞
- 年度漫畫獎(年間漫画賞):優れた台湾マンガ作品6作品に贈られる賞
- 金漫大獎(金漫大賞):年間漫画賞の受賞作から最も優秀な作品に贈られる最高位の賞
- 特別貢獻獎(特別貢献賞):台湾のマンガ産業に特別な貢献をした個人・団体に贈られる賞
昨今のマンガ界のデジタル化の風潮を鑑み、今年からはデジタルプラットフォームで発表された作品にも門戸を解放しました。
デジタルで公開されていれば海外の読者も簡単にアクセスできますし、もしそうした作品が受賞するとなれば、台湾マンガが今まで以上に国際的に注目されるきっかけにもつながりそうです。
ドラマ化され日台の人々の心をつかんだ作品も
過去の受賞作は金漫奨のオフィシャルサイトから確認できますが、近年、台湾や日本で特に注目を集めた作品といえば、2017年に年間漫画賞と青年漫画賞をダブル受賞した阮光民(ルアン・グアンミン)の『用九柑仔店』でしょう。
大都会・台北で働く主人公の楊俊龍が、よろず屋を営んでいた祖父が倒れたのを機に、店を畳むために戻った故郷で繰り広げるヒューマンドラマは、2020年にテレビドラマ化されると、台湾の最も優れたテレビ番組に贈られる「金鐘獎(金鐘奨)」の戲劇節目導演獎(ドラマ部門監督賞)と、金漫奨のクロスメディア展開賞を受賞。若者からお年寄りまで多くの台湾人の心をつかみました。ドラマは日本でも「いつでも君を待っている」というタイトルで放送され、原作の日本語版『用九商店』も書店に並びました。