注目ポイント
早くも10月。多少気温が下がって過ごしやすくなるこの時期の台湾の花市場は大忙しだ。中秋節や国慶節の連休になると、毎年、多くの一般人が花を買いに来るため、市場関係者は通常業務をこなしながら、一般人への対応もしなければならない。臨時でアルバイトを雇うところも多いが、人手不足に頭を抱えるのはどこも同じ……。
今回は台湾の花市場で働く人々について紹介したい。そもそも「仲卸=花市場」だと思われるかもしれないが、台湾では花市場と仲卸の母体は全く別モノで、花市場は民間企業と台湾政府が半分ずつ持ち株を有しており、公務員として勤務している人もいる。
花市場の仕事は日本と同様に、主に切花部門と鉢物部門に分類される。どちらも基本的な仕事は毎日届く新しい花材の手配や品質確認、セリの準備、精算、配送や流通関係などで、ほかにも事務作業や花材整理と仕事は多岐にわたる。
連休をはじめ、クリスマスや旧正月、母の日といった大型イベントの際には人手不足になることから、毎年11月頃になるとアルバイトの募集が始まる。とはいえ、いくら募集をかけても慢性的に人手不足だと市場関係者は嘆いている。思うに、深夜から早朝にかけての肉体労働にもかかわらず、時給が「政府が定める最低賃金」では割に合わないのだろう。もう少し賃金の見直しをしてほしいものである。

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繁盛店ならサラリーマン以上の給与も
一方、仲卸は市場から土地を買ったり借りたりしながら、市場内の仲卸エリアで花材を少量販売している会社で、中には独自に貿易して特殊な花を確保し、集客しているところもある。
花市場のメインの仕事が花材の手配であるのに対し、仲卸は花屋や一般人への小売がメインだ。日本の花屋なら市場のセリに直接参加することも多いが、台湾の場合、ほとんどの花屋は仲卸から花を買うことになる。言い換えれば、仲卸にとって最も大切な客は花屋であり、週に何度も花を買いに訪れる花屋をいかに固定客として定着させるかが重要となる。
仲卸の仕事は、朝3時開始のセリから始まる。事前に花屋から要望された花材をリストアップし、セリでいかに安く品質の良いものを落とせるかがカギだ。セリが終わると、自身の店舗で既存の花材の破棄や新しい花材の整理、陳列を行う。そういった作業をしているとあっという間に朝6時になり、花屋たちが続々と訪れてくるため、今度は接客と梱包、配送に徹しなければならない。
このように仲卸も非常に大変な仕事だが、繁盛している店なら社員の給与はその辺のサラリーマンと同等、もしくはそれ以上にもなる魅力的な仕事だ。私の知っている限り、安くても月4万元(約19万円)、高ければ月15万元(約70万円)ほどもらっている人もいる。ただし、勤務時間は午前2時から午後2時まで、一般人と生活スタイルがかなり異なることは覚悟する必要がある。

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知り合いか否かで対応が異なる台湾社会
花市場にはほかにも、警備員、清掃員、資材業者と、さまざまな人が働いている。市場関係者ではないが、出入り口の前の道路にはタクシー運転手も大勢待機している。