注目ポイント
「アジアで活躍する日本人」は、日本を飛び出しアジア各国を拠点に活動する日本人から、異国での仕事や生活から見えてきたその国や日本の姿、交流の可能性を聞くコラム。1991年愛知県名古屋市出身、日本で芸能活動をスタートした河村一樹さんが拠点を台湾に移したのは5年前。日本と台湾の文化の違いや、外国人視点での台湾生活を面白おかしく中国語で取り上げるSNSのショート動画が人気を博し、活動の幅を広げている。
台湾人の温かさに触れて拠点を台湾に
旅行とオーディションを兼ねて台湾に来たのは5年前です。当時は東京で芸能活動をしていたのですが、ダンスや歌もできず、英語もしゃべれない自分には「大きな武器がない」と悩んでいました。それで中国語の勉強を始めたところ、台湾人の友人ができて、台湾の芸能事務所を紹介してくれたんです。
2017年の1月に台北に来て、無事に所属する事務所も決まり、2018年4月から完全に拠点を移しました。移住の決め手になったのは、台湾の方々の温かさ。差別や嫌な思いをしたことは一度もないし、うまく意思疎通できなくても嫌な顔一つせずに翻訳アプリを使ってくれたり、日本語が話せる台湾人を紹介してくれる。そんな人柄に惹かれたのが一番の理由です。

何もかもが新鮮だった来台当時=本人提供
知名度アップのきっかけになった「ショート動画」
今はモデルやタレント、インフルエンサーとしての活動がメインです。今年初めからインスタグラムでショート動画を毎日アップするようになって、知名度が上がってきたと感じます。
7月からはHamiVideoで始まった「開店 BAR 夥伴」という、台湾の有名インフルエンサーを集めてイチから「バー」を作るリアリティショーにも出演しています。ほかのメンバーは台湾人のほとんどが知っている有名人ばかり。自分が選ばれたことが今でも信じられませんが、僕も含めてみんなお酒が好きなので、すぐに打ち解けられて、楽しく収録に臨めました。
実は、「開店 BAR 夥伴」に出演するきっかけになったのもショート動画でした。番組スタッフの一人が好いてくださっていて、オーディションに誘ってくれたんです。ユーチューブも3年前から続けていますが、どちらも特別やりたくて始めたわけではなくて、すべては目標である俳優になるため。今はショート動画に力を入れて知名度を上げ、さらに中国語のスキルを上げることが大切な時期だと思っています。
動画は本当にいろんな人が見てくださって、街中で声をかけてもらう機会が増えました。一番のプラスになったのは、とても有名な俳優さんでも制作者の方でも「日本好き」の方ならほとんどが「君の動画を見たよ」と声をかけてくれること。
自分自身を広告できるツールになったし、SNSで発信することで「台湾人が日本人に求めるもの」をたくさん学べていますから、その経験を活かしていけるよう心がけています。

河村さんの紹介動画(開店 BAR 夥伴のYouTubeチャンネルより)
台湾のエンタメ界は所属事務所にかかわらず平等にチャンスがある
日本と違って台湾では芸能事務所の力関係があまりありません。今、台湾のユニクロのCMに出演させてもらっていますが、日本で大手企業のCMに出るとなると、大手事務所でなければオーディションのチャンスさえない。でも、台湾なら普通に参加できるし、それで私は合格を勝ち取ることができました。所属事務所にかかわらず、平等にチャンスが与えられるのはとてもうれしいですね。それに、台湾は時間にゆとりがある。仕事においてもプライベートにおいても、時間のプレッシャーを感じなくなりました。
