2023-09-29 政治・国際

確率8割で「意図的せぬ戦争」勃発 米、中、台湾いずれも挑発側になる可能性 米政治学者

© 中央通信社

注目ポイント

アメリカの政治学者アリソン氏は、将来、米中戦争が勃発した場合、80%の確率で「意図的でない」戦争になると考えている。同氏は、過去に米国が状況を見誤り、戦争を引き起こした例があると指摘。馬英九前総統は「特殊な国と国の関係(二国論)」は戦争につながりかねない挑発的な発言だと強調し、政府に対し両岸の対話に一層の配慮を求めた。

ハーバード大学ケネディ・スクールのグレアム・アリソン初代院長は、台北で開催された東南アジア影響同盟(SIA)主催の第1回「2023台湾地政学サミット」にオンライン参加し、台湾海峡の情勢を分析した。アリソン教授は、米中台は現在の「一つの中国」政策に基づき現状を維持しており、一方が意図的に戦争を起こす心配はないと指摘する一方、どちらかが状況を見誤れば、一触即発で「意図しない戦争」に発展する可能性もあると警告した。

 アリソン氏はアメリカの政治学者で、レーガン元大統領の国防特別顧問や、クリントン政権下で政策担当国防次官補を務めた。アリソン氏は「トゥキディデスの罠」という言葉を用いて、新興大国が既存のヘゲモニー国の地位を脅かしたときに、双方が直接戦争で衝突する可能性を表現した。

 7年前にトランプ前米大統領が選出されたとき、アリソン氏は『米中戦争前夜――新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ(注:邦題)』を出版したが、同書では国家間のパワーバランスを「権力のシーソー」という比喩を用いて説明している。アリソンによれば、権力が変われば、互いに対する各国の視点や心理も変化するという。ちょうど中国の台頭後、アメリカの政治家の多くが「アメリカは中国より優れた存在になれる」ことを証明しようと躍起になり、それが間違った理解を拡大させ、間違った判断を強め、本来ならば影響力のなかった行動が対立に火をつける可能性がある。

アリソン氏は、中国が攻撃的なだけでなく、米国と台湾も「挑発的」になる可能性があると言う。仮に台湾の新総統が独立を宣言し、アメリカの上院議員が台湾のNATO加盟を求めた場合、たとえ紛争を起こす意図がなかったとしても、中国に戦争に踏み切らせる挑発行為になりかねない。もし中国政府が反応しなければ、失格と見做されてしまうためである。

「歴史を振り返ってみると、一般的に起こり得ないと思われていたことの多くが、その後、致命的に誤った判断であったことが証明されている」とアリソン氏は述べ、現在の政策が維持されるのであれば、米中あるいは中台間の『意図的な戦争』が起こる心配はないというが、どちらか一方の行動が不注意に戦争につながることは容易に想像できる。1914年のオーストリア・ハンガリー帝国のフランツ・フェルディナント暗殺事件の時は、当初は取るに足らない出来事だと思われていたものが、各国の連鎖反応の末、5週間後に第一次世界大戦の勃発という結果を招いた。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい