開票日カウントダウン

選挙ページへ

2023-09-28 政治・国際

中国企業 カンボジア巨大リゾート計画を15年間放置 米疑念「別の目的」?

© 中国が支援するカンボジアのダラサコール・プロジェクトの建設現場=2020年1月3日、カンボジアココン州。

注目ポイント

カンボジア南部の海岸沿いの広大な土地を中国企業が、99年間にわたるリース契約を結び、巨大リゾート都市構想を進めている。だが、15年前に着工した同構想は、まるでとん挫したかのように高層マンションや高速道路、空港などが建設途中で放置されているという。この計画には別の目的があるのではないかと米国などは疑念を抱いている。

カンボジア南部に着工から15年経っても建設途中のまま放置されたような町がある。複数の中国企業が99年間のリース契約を結び、「ダラ・サコール海岸リゾート」と称される巨大リゾート都市が計画されているダラ・サコール経済特別区だ。

英BBC(電子版)は今週、「カンボジアの広大な土地を所有するいかがわしい中国企業」との見出しで、ダラ・サコールの現状を特集。「高速道路は黒いリボンのように森の中を通って海まで達し、さらには世界最大級の観光プロジェクトにつながっている」と同経済特別区を紹介した。

ダラ・サコールのリゾート構想は、「自己完結型の観光都市を建設するという中国企業による壮大な計画」だとし、同特別区は「中国の居留地であり、国際空港、深海港、発電所、病院、カジノ、豪華な別荘を備えた〝宴会とお祭り騒ぎ〟の場」と表現した。

だが、「空港は未完成で、5つ星ホテルとマンションが併設されたカジノが1軒だけ海の近くにぽつんと建ち、目の前は整備されていない道路が走り、周囲は建設現場に囲まれている。観光事業としてはまだ始まったばかりだが、アジアで最も豊かな自然環境に恵まれた地と、そこに住む数千の人たちにすでに悪影響を及ぼしている」という。

カンボジアにおける中国の経済的影響力は今や圧倒的で、中国は一国だけで直接投資の半分と対外援助の大半をカンボジア政府に提供している。同国は中国の習近平指導部が推し進める巨大経済構想戦略「一帯一路」の忠実なパートナー国で、その恩恵を受けている。だが、中国からの投資の多くは投機的で、性急なうえ計画性が不十分だとBBCは指摘する。

例えば、ダラ・サコールの湾を隔てた、かつては静かな海岸沿いの町だったシアヌークビルは、中国のカジノ需要を満たすため、わずか数年で巨大な建設現場に変わった。それが治安を悪化させ、コロナ禍によりギャンブル経済の崩壊を引き起こし、町には建設途中の高層ビルがあちこちに放置されている。そのため、ダラ・サコールも同じようになるのではとの懸念が住民の間でくすぶっている。

ダラ・サコール構想は、今年8月に40年近く続けた首相の座を長男フン・マネット氏に譲ったフン・セン氏が好んだ種類の開発計画だとされる。援助と投資に関して中国の〝問答無用〟のアプローチは、〝タフな政治家〟と自称したフン・セン氏を魅了したのだという。

同氏は、1990年代に30年にわたったベトナム戦争と、その後の壊滅的なポル・ポト政権を終結させた後、自国の再起をはかるため猛烈な成長を推し進めた。だが、この成長の裏には、広大な土地をめぐって取り巻きや外国企業に寛大な優遇措置を与えることによって達成されたとされる。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい