注目ポイント
中国の李尚福国防部長(大臣に相当)が当局の調査を受けている可能性がある。李国防部長は現職に就く以前、2017年から中国武器購入を担当する重要部門である中央軍事委員会装備発展府部部長を務めていたが、今年7月、中国商務省は在職中だった2017年10月以降の装備の調達、入札プロセスに不正の疑いがあるとして、調査を行うよう通達した。
中国の軍部、外交部門には不穏な動きが見られる。李尚福国防部長は8月末からすでに3週間動静が途絶えている。これは6月に当時の秦剛外交部調が失踪して以来、2度目となる高官レベルの行方不明であり、米国政府は、李国防部長が当局の取り調べを受けていると見ている。海外でも李国防部長は「失踪」ではなく、実際は当局から取り調べを受けているとており、中国人民解放軍ロケット軍内の粛清に関連していのではないかとの憶測も流れている。一部の研究者は、これは中国人民解放軍が不安定な状態にあり、習近平国家主席が高度な集権体制の段階に入ろうとしていることを示すものだと指摘している。
9月15日付のフィナンシャル・タイムズ紙によると、李国防部長の動静について、中国当局は健康上の理由だと説明しているものの、米国政府関係者や事情に詳しい人物は失脚した可能性が高いと見て調査を進めている。ラーム・エマニュエル駐日米国大使も9月15日、自身のX(旧Twitter)で、李国防部長はベトナム外遊を欠席し、更にシンガポール海軍総司令官と予定されていた会談も欠席したことに触れ「自宅に軟禁されているのではないか?」と指摘した。
李国防部長が最後に公の場に姿を現したのは、8月29日に北京で開催された「中国・アフリカ平和安全フォーラム」で、この時は演説を行ったが、9月7~8日に中国・ベトナム国境で開催された年次防衛協力会議には欠席した。 ベトナム政府関係者によると、中国政府は会議の数日前に李国防部長が「健康不良」のため欠席すると伝えてきたという。
今年、中国では秦剛外交部長(当時)が6月25日以来公の場から姿を消した。1か月後の7月25日、中国全人代常務委員会で解任が決定し、後任に王毅前外交部長が任命された。 今回の李国防部長の失踪は、第二の秦剛事件に発展するのではないかという憶測が流れている。
李尚福国防部長(65歳)は、今年3月に中国国防部長に任命された。習近平国家主席が今年任命した5人の国務委員のうちの1人である。 李国防部長が秦剛外交部長のように解任されれば、わずか3カ月の間に大臣が二人も解任されたことになる。

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中国当局は李国防部長の所在についていまだ報じてはいない。ワシントン・ポスト紙によると、中国国防省のウェブサイトには依然として李国防部長の名前が記載されているが、汚職や其の他の不祥事で要職者が解任されても、通常、理由は明かされないという。今年6月に秦剛外交部長が行方不明の後に解任された際も、中国外交部はコメントを拒否し、外交部のウェブサイトから秦剛氏の名前を削除するだけだった。 習国家主席が今年、人民解放軍ロケット軍の幹部2人を交代させたときも、中国政府からの唯一のメッセージは後任者の名前だけであった。