注目ポイント
中秋節は台湾の4大節句(春節、清明節、端午節、中秋節)の一つで、旧暦の8月15日です。今年は今週金曜日(9月29日)が中秋節です。台湾では中秋節に文旦(ザボン)や月餅を食べ、一家でバーベキューをして過ごします。変わらない習慣と、変化していく習慣、今回は月餅・蛋黃酥をはじめ、中秋節にバーベキューをするようになった背景についてご紹介します。
月見団子・ススキvsザボン・月餅
♪うーさぎうさぎ、♫なに見てはねる♬十五夜お月さん見てはーねーる♩♬、と歌いながら、ススキと月見団子を縁側に飾って中秋の名月を愛でる日本のお月見スタイルと、台湾のお月見はずいぶん違います。日本では平安時代中期ごろから貴族が旧暦の8月15日にお月見をする習慣が始まりました。一方中国では月を見る習慣は秦の時代からありましたが、これが8月15日に固定したのは唐から宋の時代にかけてのころです。
月餅のニュートレンド
台湾では文旦(ボンタン、又はザボン、「柚子」とも書きますが、日本の「ゆず」ではありません)収穫の最盛期と重なっていることから、中秋節には文旦を食べます。「柚子」は「佑子」(子供を守るという意)と発音が同じであることから重宝されています。台南の麻豆、苗栗の大湖の文旦は有名です。
また、中秋節のお供え物、贈答品として唐の時代に「月餅」が登場します。小麦粉を焼いた皮の中にアヒルの卵の黄身、小豆餡、蓮の実、クルミ、ナツメ餡などを詰めた円形の焼き菓子で、香港式月餅、蛋黄酥、鳳梨酥、綠豆椪などいろいろな種類があります。以下に人気店をいくつか挙げておきます。
・月餅:美心月餅(香港系)、元祖雪餅(アイスクリーム系)
・蛋黃酥(卵の黄身):不二坊、陳耀訓、Mr.啃
・鳳梨酥(パイナップルケーキ):李鵠餅店、小潘蛋糕坊、佳德鳳梨酥
・綠豆椪(白餡の月餅):裕珍馨、舊振南、犁記
中秋節の1~2か月前ともなるとどの店も長蛇の列ができます。

中でも、ニュートレンドとして取り上げたいのは、2017年に世界パン職人コンテストで見事優勝した職人が作る「陳耀訓」の「紅土蛋黄酥」で、一般の月餅に比べて一箱980元(約4530円)で、値段が2倍近くするにもかかわらず、7月ころからネット予約が始まり、入手が非常に困難な高級蛋黄酥です。転売する人もいて、転売価格は更に3~4倍になります。「蛋黄酥界のエルメス」の異名を持っています。
「Mr.啃」も、高価格の蛋黄酥を売りにしています。年々高くなっていて、今年は一箱1500元(約7000円)以上ですが、あっという間に完売します。
このように蛋黄酥の高級化・高価格化は最近のトレンドとして台湾の人々に受け入れられつつあるようです。

中秋節はバーベキューの香り
もう一つ、台湾の中秋節の特長としてバーベキューが挙げられます。唐の時代にも平安時代にも月を見ながらバーベキューを食べるなんて習慣はありません。これは約40年前に新竹で始まりました。二大醤油メーカーの萬家香と金蘭がバーベキューソースの宣伝に力を入れ始めたのは1980年、同時に新竹のバーベキューグリル・コンロのメーカー各社の海外販売が鈍り始めたため国内に軸足を移して販売促進を行った結果、新竹で爆発的にバーベキューは流行したのです。1986年から、萬家香は中秋節に的を絞って「一家烤肉萬家香(一家で焼き肉萬家香)」とか「有媽媽的味道(母さんの味)」というセリフのテレビCMを集中的に流し、中秋節=一家団欒=バーベキューのイメージが台湾全土に定着し、今に至っています。