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英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は25日、複数の関係者からの情報として野村ホールディングスのグループ会社幹部が中国本土から出国停止を命じられたと報じた。これは、今年に入って消息が不明となり、当局に拘束されていると伝えられる中国の大物投資家・包凡(バオ・ファン)氏への長期にわたる捜査に関連した措置だという。
フィナンシャル・タイムズ紙によると、ノムラ・インターナショナル(香港)で中国向け投資銀行部門の責任者を務める王仲何(チャールズ・ワン・ゾンギ)氏に対する制限は、中国本土からの出国停止のみで、それ以外の出張や旅行は制限されておらず、拘束もされていないとされる。
だが、海外投資家の中国に対する信頼がすでに低下していることが示されるなか、王氏のような香港在住のベテラン銀行家への出国禁止措置は、中国で展開する外資系企業に新たな不安を与えているとFT紙は指摘した。
同紙によると、王氏は9月13日、ソーシャルメディアに「中国西部・青海省へ旅行中」だと投稿。「私の誕生日、そして私の人生の転換点に、母国の北西部への旅に出かけた…(私は)常に旅を続け、常に最終目標を達成し、常に真実、優しさ、愛を大切にします」とつづっていた。
今回の措置を受け、米国務省は、「出国停止など、法の恣意的な執行や、不法拘禁のリスク」を考慮し、米国市民に対して中国への渡航を再考するよう警告した。
王氏に対する出国停止命令は、投資銀行・華興資本(チャイナ・ルネッサンス)の創業者で会長兼CEO(最高経営責任者)の包氏と、同社の元社長だった叢林(コン・リン)氏が、すでに何か月も消息不明になったことに続く金融界にとっての衝撃だ。
包氏は2月に同社が「捜査に協力している」と発表して以来、姿を消したままだ。また、叢氏は中国の証券監督当局に1年前に召喚され、華興資本の証券部門での職を辞した後、拘束されたと伝えられる。
今回、出国が停止された王氏と叢氏には、ある共通点があった。叢氏は2017年、華興資本に入社するまで、国営の中国工商銀行(ICBC)傘下のICBCインターナショナルの最高経営者(CEO)を務めた。王氏は18年にノムラ入りする前、ICBCインターナショナルに在籍し、ICBCでの在籍期間が重なる時期があった。その関係性を調査するため、当局が王氏を中国国内にとどめているとみられる。
FT紙によると、叢氏は華興資本に移籍前、同社とICBCとの戦略的パートナーシップ提携で重要な役割を果たした。その提携の一環として、ICBCインターナショナルは、華興資本の株式を担保に、同社に2億ドルの融資枠を提供したとされる。その際、CEOだった叢氏が不正行為に関与した疑いで捜査を受けているとロイター通信など一部メディアが報じていた。
その叢氏の上司だった包氏は、米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、弁護士との面会なしに最長6か月間拘束されることもある「留置」という特別な形式で拘束されているという。包氏が今後、正式に逮捕・訴追されるかどうかは不明のままだ。