2023-09-26 政治・国際

日台が戦略的連携へ!先端技術連携強化に向け本格始動した夏【李世暉の天秤】

© 李世暉氏提供

注目ポイント

コロナ禍の沈静化で2023年夏は日台間往来も次第に日常を取り戻した。相互交流もまた「正常化」というよりはコロナ禍以前に比べ一層拡大、深化しているといえそうだ。最近の動向を見ても、8月7日から9日まで麻生太郎自民党副総裁が訪台した。続いて8月24、25日には日本の半導体戦略を主導する甘利明衆自民党前幹事長(半導体戦略推進議員連盟会長)も台湾入りしている。台湾メディアの注目度から判断すると、麻生太郎氏は主に「台湾有事」を念頭に、安全保障問題に関心を寄せているのに対し、甘利明氏は経済安全保障と半導体戦略に関心を持っている。戦略物資としての半導体が注目されるなか、日本と台湾の先端技術連携強化が本格的に始動したようだ。

台湾・国家安全局も麻生氏発言に注目

麻生太郎氏、甘利明氏という日本政界重鎮クラスの衆院議員2人による相次ぐ台湾訪問は、台湾メディアで大きく取り上げられただけでなく、台湾当局も非常に重視しており、日台関係が引き続き深化していることを強く予感させた。

麻生氏と甘利氏は、いずれも台湾訪問中に総統府に招待され、蔡英文総統と会談した。それぞれの会談内容の違いにより、台湾のメディアや当局の対応にも違いが見られる。

© JIJI Press/AFP via Getty Images

総統府で蔡英文総統(右)と会談した麻生太郎自民党副総裁=2023年8月8日、台北市

12年ぶりに台湾を訪問した麻生氏は、台北市内で開催された国際フォーラムでの講演などを通じ、台湾と日本の深い関係を継続して発展させることの重要性を強調したが、それは主に日本国民と日本の政治家に対して訴えるものだったのだろう。

メディアの報道を通じて、このメッセージは日本にもすぐに伝わる。このようなケースは過去の日台交流でも同様の展開があったが、今回台湾を訪問し、そのような言動を示した人物が政治方面において過去最高レベルであったということが焦点となった。

蔡英文総統に陪席して会談に臨んだ台湾当局者は主に外交部(外務省)幹部であったが、国家安全局の担当者も同席していた。

 

甘利氏も蔡総統と非公式に会談

一方、11年ぶりの訪台となった甘利氏に関しては、半導体サプライチェーンや台湾も加盟をめざしている「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP)の発展動向に焦点を当て、一部非公開の情報を含んだ、台湾と日本のハイレベルな意見交換のための訪台であると位置づけられたが、台湾と日本のメディアの報道は麻生氏の際と比較し、控えめであった。

しかし、敏感な問題についての意見交換に焦点を当てた今回の交流は、これまでの日台交流とは異質のものだった。

『2023年台日科技対話』会場にて筆者(左)と甘利明氏=2023年8月25日、台北市(李世暉氏提供)

蔡英文総統に同行して会談に陪席した台湾当局関係者は、こちらもまた主に国家安全局の担当者であり、これの補佐であるかのように外交部も同席していた。

注目すべきは、甘利氏が台北市内で開催された『2023年台日科技対話』(科学技術対話)国際フォーラムに出席し、「経済安全保障と半導体戦略」に関する基調講演を行ったのみならず、非公式ながら蔡英文総統との会談も行ったことであり、日台関係が先端科学技術連携でも新たな段階に入ったことを象徴するものであった。

 

CPTTPでの日本の主導力と台湾の半導体競争力

これらが日台関係の新たな段階を象徴していると断言できるのはなぜか?次のような理由があげられる。

それは台湾と日本の交流モデルが、これまでの外務省(や窓口機関)主体の友好関係から、国家安全保障担当当局主体の戦略的協力関係へと変化したためである。

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