注目ポイント
上海の米国商工会議所が実施した会員への調査によると、中国に進出している米企業は、技術や貿易などをめぐる問題により米国との関係悪化が事業の大きな障害になり、海外の投資先として中国から東南アジアにシフトしていることが分かった。
今週発表された米国商工会議所の調査では、回答した会員企業325社のうち3分の2が中国での戦略を当面変更する計画はないとしたものの、海外投資先として中国の重要性を引き下げていることを示した。また、調査対象企業のうち約5社に1社が、今年中国への投資を削減すると回答。その最大の理由は「米中貿易関係の不確実性」で、中国の「成長鈍化」が続いた。
多くの企業が中国政府の「ゼロコロナ」政策による混乱に巻き込まれ、都市機能や交通網が、時には数週間にわたって閉鎖された昨年より、さらに悪化していることが今回の調査で明らかになった。このような混乱が国外へ事業を移転させようと検討する引き金になっていた。
調査対象企業のうち、52%は中国における5年間の事業見通しについて楽観的だと答えたが、これは上海の米国商工会議所が1999年から毎年調査をするようになって以来最低の数字。また、10社中9社近くが、コストの上昇が大きな課題であると回答した。
多くの企業は「地政学的な緊張」を主要な懸念事項とし、続いてパンデミック後の力強い好況への期待を打ち砕く「経済減速」を挙げた。
調査によると、中国以外に投資先を移す米企業の40%は、移転先に東南アジアを選択肢に挙げ、米国、メキシコがそれに続いた。2022年の調査では、調査対象だった製造業の40%が中国は投資先トップ3に入っていると回答したが、今年は26%に低下した。
また、米国企業は中国政府が何を許可し、何を禁止しているのか、ルールが不透明だとし、さまざまな規制を明確にするよう中国当局に求めている。同商工会議所のショーン・スタイン会頭は、「企業は躊躇(ちゅうちょ)している」とし、金融企業と製薬会社にとって、特に深刻な問題だと指摘した。
例えば北京では3月、アステラス製薬の日本人男性社員がスパイ容疑で拘束され、中国当局が男性を刑事拘留したことが20日分かった。容疑についても、どのような行為が法に抵触したのかも明らかにされていない。
スタイン氏はオンライン会見で、「企業が何よりも必要としているのは明確さと予測の可能性だが、多くの分野で中国の法規制環境は透明性が低下し、不確実性が高まっていると企業が報告している」と述べた。
この調査結果は、他の外国企業を対象にした調査結果とも一致した。
外資系企業は、コンサルティング会社2社と、投資先の価値やリスクを調査するデューデリジェンス会社1社に対する当局による説明のない強制捜査を受けたことで、さらに神経をとがらせている。スパイ防止法の適応拡大は大きなリスクとみなされている。