2023-09-26 政治・国際

ジャニーズ問題ほか、アイドルの性加害に対する日韓メディアの差

© Reuter 記者会見に出席したジャニーズ事務所代表取締役社長の井ノ原快彦氏、新社長の東山紀之氏、前社長の藤島ジュリー景子氏=2023年9月7日

注目ポイント

ジャニーズ事務所の創業者、故・ジャニー喜多川氏の所属タレントへの性加害問題については、1980年代に元タレントが被害を訴える手記を出版、90年代後半から00年代には週刊誌が被害者の証言などを報じていたが、現在の騒動に発展したのは今年3月の英公共放送BBCによる告発ドキュメンタリーがきっかけだった。大手芸能事務所への長年の“忖度”の構図が明らかになった日本のマスコミ、一方で韓国のマスコミは、自国の芸能界の性加害・セクハラ問題を積極的に報道している。

ジャニー喜多川に性加害はあったと認識している。被害者の皆様に心よりお詫び申し上げる。

9月7日、東京都千代田区のパレスホテル東京で開かれたジャニーズ事務所の記者会見。その冒頭、藤島ジュリー景子氏(現代表取締役)が上記のように発言した。2019年に87歳で死去したジャニー喜多川氏の性加害をめぐる騒動を受け、ジャニーズ事務所側が公式に謝罪した格好となった。

芸能業界における性加害やセクハラ問題は、韓国も例外ではない。今年1月には、男性アイドルグループ「OMEGA X」が、「酒席でセクハラ被害を受けた」などとして所属事務所「SPIRE ENTERTAINMENT」を相手取った裁判で勝訴。昨年11月にOMEGA Xが開いた会見の衝撃は大きく、日本でのマネジメントを担当していた株式会社SKIYAKIが所属事務所との業務提携を解消している。

2020年に明るみになった、テレグラム等を利用した性犯罪事件「n番部屋事件」では、多くの芸能人がSNSなどを通じて加害者に対する厳罰処分を訴えたことで事件に対する世間の関心が高まったとされる。今年8月には大阪で開かれた野外ライブで、韓国人DJのDJ SODA氏が観客と触れ合った際に「胸を触られた」などとSNSで被害を告発し、日韓のメディアが報じたことも記憶に新しい。

© SCMP via Reuters Connect

DJ SODA氏の性被害問題では、SODA氏への誹謗中傷や差別発言も相次いだ

冒頭に触れたジャニーズ問題では、日本のマスコミがジャニー喜多川氏の性加害について報道してこなかった。筆者が実際に感じたことを記すと、①ジャニーズの性加害について昔から触れていたのは雑誌や書籍が中心、②日本のマスコミが報道してもあまり大きく扱わないーーという印象であった。背景には様々な理由があるのだろうが、その一つは「忖度」に違いない。「自社のテレビ番組に所属タレントが出演しているため、ジャニーズ事務所にとってマイナスとなることはあまり報道したくない。事務所に配慮したい」「ジャニーズの疑惑について報道すると、何らかの圧力がかかり、仕事をすることが難しくなるため報道したくない」などの理由だろう。

一方、韓国芸能界の性加害に対する韓国マスコミの対応は真逆だと感じている。韓国の革新系大手メディア「ハンギョレ」は昨年8月にとある記事を掲載。芸能事務所の名前は出さなかったものの、ある芸能事務所の代表が10代女性に対して「着ていた服を脱げと言った。続いて強制わいせつをはたらいた」として警察に告発され、捜査中であることを報じた。

19年1月には、韓国のスポーツメディア「スポーツソウル」もセクハラ疑惑を報道。「韓国芸能プロダクションの女社長が、練習生6人にセクハラしたとして告訴された」とし、地元メディアの「YTN star」の報道を引用した。記事をまとめると、事件はプロダクションの練習生が公演のため日本を訪問した際に発生。新大久保で食事会をしていたとき、事務所の女性代表と事務所会長の妻で代表の妹でもある人物がわいせつ行為を行ったとしている。

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