2023-09-20 観光

僕と幽霊が家族になった件―台湾代表として米アカデミー賞ノミネートなるか―

© Netflix公式サイトより

注目ポイント

今年2月に台湾で劇場公開された「關於我和鬼變成家人的那件事(邦題:僕と幽霊が家族になった件)」、8月にNetflixで配信されてから人気はウナギのぼり、多くの作品をしり目に8月30日、米アカデミー賞(2024年)に台湾代表作品として出品することが決まった。今年末にノミネートされるかどうか楽しみである。この映画は古い言い伝え「冥婚」と新しく合法化された「同性婚」の二つのテーマを取り扱ったアクションコメディー映画である。冥婚の詳細なやり方も見せてくれるし、イケメン俳優のセクシーな姿も見られる。パロディあり、男優の可愛さあり、女優の迫真の演技あり、もしかしたらオスカー像がもらえるかも。

米アカデミー賞台湾代表作品として出品へ

来年3月10日に行われる米アカデミー賞に出品する台湾代表作品として、「關於我和鬼變成家人的那件事(邦題:僕と幽霊が家族になった件、英:Marry My Dead Body)」が選ばれた。監督は「紅衣小女孩(赤い服の少女)」で有名な程偉豪で、主役の警官役に、タイムスリップの恋愛ドラマ「想見你(会いたい)」で主役を務めた許光漢、彼の相棒で絶妙の味を出している女性警官役には、「華燈初上」に学生時代の羅雨儂役で出演した王浄、そして轢き逃げ事故で不慮の死を遂げ、成仏できずに男性警官と結婚するハメになった幽霊役に「台北女子図鑑」に御曹司役で出演した林柏宏が抜擢された。

「僕と幽霊が家族になった件」の初見は去年だが、映画館での初上映は今年2月11日、3億6千万元(約16億6千万円)の興行収入を記録し、大ヒット作品となった。今年8月10日にはNetflixで世界に向けた配信が始まった。

© 「僕と幽霊が家族になった件」映画ポスター

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古くからの言い伝えと新しい変革

この映画のテーマは「同性婚」と「冥婚」である。

蔡英文政権は2019年、同性婚の施行を目的とする特別法を制定し、立法院で5月17日に賛成多数で可決され、アジアで初めて同性婚が合法化された。これは世界でも27番目で、LGBTQなどに対して台湾がダイバーシティの推進にかなり積極的なことがわかる。同性婚は、わずか4年前に合法化された新しい変革と言える。

© Shutterstock

一方、冥婚の「冥」は「冥土」の「冥」、「婚」は言うまでもなく「結婚」の「婚」であり、冥婚とは死者同士、又は生きている人と死者が結婚するという、古くからある言い伝えである。未婚でこの世を去った息子・娘のために、紅包(赤い封筒の意、日本のご祝儀袋に当たる)に死者の遺髪とか爪とかお金などを入れておき、道端に無造作に置く。何も知らずにそれを拾った人は死者とめでたく結婚する運びとなる、という言い伝え、迷信、土着信仰である。もともと台湾には、旧暦7月は、道に落ちている小さいものには悪霊が憑きやすいので、それを拾ってはいけないという禁忌がある。それがご祝儀袋ならなおさらである。

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死者が男でも女でも、また拾った人が男でも女でも関係ない。紅包を拾ったのに結婚を拒否すれば次から次へと災難に見舞われる。

犯人追跡中の主人公吳明翰刑事(許光漢)が相棒の女刑事林子晴(王淨)と犯人を追跡中に死者の祖母がわざと道端に置いた紅包を拾ってしまい、おばあちゃんから、孫の毛邦羽(林柏宏)との結婚を迫られる。当然強く拒否するのだが、次々に起こる災いが怖くなり、ついに結婚の儀式を行うことになる。まず死者毛邦羽の意思を聞くため擲筊(パッポエ)を放ると、「それでよろしい」というお告げの聖筊(シンポエ)であった。

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