2023-09-19 政治・国際

東南アジア最大の経済大国インドネシアが土壇場でBRICS入りを辞退した理由

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注目ポイント

インドネシア政府は今年7月、BRICSに加盟するかどうかを議論したが、インドネシア外相と財務相がともに反対したことが分かっている。 同大臣らは、インドと中国の国境紛争などBRICS加盟国間の連帯が欠けていること、ロシアのウクライナ侵攻後にロシアと並ぶ組織に参加するのは負担が大きいこと、インドネシアが特定の政治ブロックに同調していると見られることなどを主張した。

ラフマン氏によれば、インドネシアは「非同盟運動」の先駆者の一つであり、大国間の競争には常に不干渉の原則を貫いてきた。BRICSへの加盟はインドネシアの外交関係を複雑にする可能性があり、「(加盟は)少なくとも今ではない」としたのは適切な判断と言える。もしも今、インドネシアがBRICSに加盟すれば、西側諸国からは中露との同盟のシグナルとみなされ、米国や他の西側諸国の外交関係に影響を与える可能性がある。

しかしラフマン氏は、インドネシアはまだBRICSに加盟していないものの、先月南アフリカのヨハネスブルグで開催されたBRICS首脳会議にジョコ・ウィドド大統領、ルトノ・マルスディ外相、ルフット・ビンサル・パンジャイタン海洋・投資担当調整相が揃って出席したことは、インドネシアがBRICSを戦略的パートナーとして、特に経済面での重要性を十分に認識していることを示しているとも指摘。 BRICSは世界のGDPの33.6%、人口の45%を占めており、ASEANの重要なパートナーとなっている。 全体として、BRICSはインドネシアに技術、知識、貿易交流をもたらし、ASEANの発展途上国とウィン・ウィンの関係を作り出すことができる。

一方、BRICSは世界を米ドル依存から脱却させるために「脱ドル化」を推進しており、これは、ルピアの使用を促進し、ルピアの対米ドル為替レートの下落を回避するというインドネシア政府の目標と一致する。また、BRICSが新たに設立した開発銀行も、インドネシアの国際取引におけるルピアの地位強化に役立つ可能性がある。

しかし、インドネシアのエアランガ大学で国際関係論の講師を務めるラディティオ・ダルマプトラ氏は、BRICSに参加するか否かを検討する際には、インドネシアは「BRICSから何を得られるか」を慎重に見極めるべきだとの考えを示す。 現在、戦争制裁下にあるロシアはインドネシアの経済的な助けにはならず、南アフリカは十分に裕福ではないかもしれない。中国に至っては、投資能力はあるが、中国とはすでに二国間関係を築いており、BRICSに加盟する必要はないと同氏は考えている。また、通貨においても中国とインドの間に摩擦があるため、BRICSが統一通貨を実現する可能性は低く、インドネシアは代わりに他の国々と二国間の協力関係を発展させることができると見ている。

「BRICSという地政学的クラブに参加するリスクは、あまりにも大きい」とラディティヨ氏は率直に述べ、BRICSは単なる経済フォーラムではなく、インドネシアとアメリカ及び西側諸国のバランスを図る運動のようなものとも付け加えた。そして「インドネシアはBRICSの中国とロシアの支配に巻き込まれ、他のパートナーを失うことのないよう注意しなければならない」とし、「BRICSの経済的利益は依然として不確実であるため、政治を犠牲にしてはならない」と述べた。

 

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