注目ポイント
インド南部ケララ州で致死性の高いニパウイルスの感染が拡大か―。同地ではこれまで700人以上がウイルス検査を受け、先月30日以降で感染者2人が死亡。少なくとも8つの村がロックダウン(封鎖)地域に指定された。聞き馴染みのないニパウイルスとは、一体どのような感染症を引き起こすのか、中東のニュース専門局アルジャジーラが解説した。
ロイター通信によると、インド南部ケララ州で13日、致死性の高いニパウイルスの感染拡大を防ぐため、一部の学校やオフィス、公共交通機関が閉鎖された。同州では2018年以降で4度目となるニパウイルス感染が発生しており、8月30日以降では感染者2人が死亡。少なくとも8つの村がロックダウン(封鎖)エリアとして宣言された。
州の保健当局者によると、現在、成人2人と子ども1人が感染し入院。ニパウイルスは感染したコウモリやブタ、ヒトの体液と接触することにより感染する。致死率は高いものの、過去において感染力は低いという。
ロイター通信は、州政府が13日、医療従事者153人を含む、少なくとも706人がウイルス検査を受けていると発表したと伝えた。結果はまだ判明していない。また、同州のピナライ・ビジャヤン首相は声明で「さらに多くの人が検査を受ける可能性がある。隔離施設も提供される」と述べた。
ニパウイルスとは何か?
まだまだ謎の多いニパウイルスについて中東のニュース専門局アルジャジーラが解説した。
米国疾病管理予防センター(CDC)によると、ニパウイルス(NiV)は1999年、マレーシアとシンガポールでブタと人に感染が流行し、300人近い感染者と100人以上の死者を出した際、初めて発見された。感染拡大を抑制するため、100万頭以上のブタが殺処分され、多大な経済的ロスを引き起こした。
1999年以降、マレーシアとシンガポールでは NiV の発生は報告されていないが、アジアの一部の地域、主にバングラデシュとインドではそれ以来、ほぼ毎年のように症例が伝えられているという。
CDCは2020年、NiVが人と動物の共通感染症ウイルスであることを発表し、動物宿主はオオコウモリ(プテロプス属)だと特定した。
このウイルスは、オオコウモリ、ブタ、および人から人への接触(唾液や尿など)を通じて広がり、人が感染すると、人から人へと感染が拡大するという。
人への感染症は、無症候性感染から急性呼吸器感染症(軽度と重度)、脳炎(脳の腫れ)まで多岐にわたり、24~48時間以内に昏睡状態に陥ることがある。世界保健機関(WHO)のデータによると、脳炎の死亡率は40〜75%としている。
急性脳炎から回復しても、その後、発作障害や人格の変化など長期にわたる神経学的後遺症などが報告されている。WHOはまた、生存者のうち少数は「その後、再発するか、遅発性脳炎を発症する」という。