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米政府関係者は、米国は長年にわたり台湾に武器売却を行ってきたが、対外軍事融資は「適格国」のみを対象としたものであり、資金は防衛用品やサービス、教育訓練の費用に充てることができると述べた。米国務省スポークスマンも米国が台湾に対外軍事融資を実施するのは歴史上「初めて」であることを確認した。
米政府は8月30日、台湾の自衛能力を強化するため、台湾に対し8000万米ドル(約116億円)の対外軍事融資(FMF)を実施すると議会に通知した。 米国が台湾に対外軍事融資を実施するのは今回が初めてで、通常は主権国家のみを対象とするものである。
バイデン米大統領は、昨年12月に「2023年度国防権限法案」に署名し、台湾に20億米ドルを上限に返済期間12年の対外軍事融資を実施することに同意するとともに、「大統領在庫引き出し権限(PDA)」を通じ、国防総省の在庫から毎年最大10億米ドル相当の軍事物資やサービスを台湾に供与することを決めた。
米AP通信の報道によると、米国務省は8月30日、台湾に8000万米ドルの対外軍事融資を行う予定であることを議会に通知し、この資金援助は、共同作戦遂行や共同防衛能力を含む台湾の自衛能力の強化並びに海上領域認識や海上安全保障能力の強化に使用されるとの声明を出した。今回の融資は大きな金額ではないが、通常このような資金援助は主権国家にしか供与されないため、中国の激しい反発を招く可能性がある。
米国務省の報道官はCNNの取材に対し、米国が台湾に対外軍事融資を実施するのは歴史上初めてのことだと認めた。同報道官は「米国は台湾関係法に基づき、台湾が適切な自衛能力を維持できるよう、必要な軍事物資やサービスを供与する。台湾海峡の平和と安定は米国の長期的な利益に適い、地域と世界の安全と繁栄に極めて重要である」と強調した。その一方、同報道官は米国が長年堅持してきた「一つの中国政策」に対する米国の立場に変わりはないことも強調した。
米国は台湾に対外軍事融資を実施、専門家:台湾を実質的な「主要非NATO同盟国」とみなす
バイデン大統領は7月28日、初めて台湾に対外軍事融資を実施したほか、「大統領在庫引き出し権限(PDA)」を通じ、台湾に最大3億4500万米ドルの軍事支援を行うと発表した。 アメリカ国防安全保障協力局(DSCA)は8月23日、国務省が台湾へのF-16戦闘機用赤外線捜索追尾システム(IRST)の売却を承認したと発表した。このシステムはF-16Vの長距離探知能力を大幅に向上させ、空戦能力を強化するものだ。
台湾の国防部のシンクタンク国防安全研究院・国防戦略資源研究所の蘇紫雲所長は、「The News Lens」の取材に応じ、米国が近年、台湾への軍事援助を続けていることは「戦略的あいまいさ」から「建設的明確さ」への転換を象徴していると指摘した。バイデン大統領が台湾を支援し防衛すると繰り返し発言しているだけでなく、ヒックス国防副長官も中国に永久に武力侵略を放棄させるためには、至るところで「ワシントンの台湾政策が大きく変わった」ことを示す必要があると述べていることからもその方針が窺える。
米政府関係者によれば、米国は過去に一度だけ、未承認国家に対外軍事融資を実施したことがあり、それはアフリカ連合に対するものだったという。下院外交委員会のマイケル・マッコール委員長(共和党)も、バイデン政権が「ついに」台湾への対外軍事融資を承認したことをうれしく思うとの声明を出した。これに対し台湾国防部は、米国が「台湾関係法」と「6つの保証」に基づき、台湾の防衛作戦能力の強化を支援し、地域の平和と安定に寄与することに謝意を表明した。