注目ポイント
台湾で話題になっているYouTube発の短編アニメがある。タイトルは「山道猴子的一生」(山道を駆けた若猿の一生)。ネットミームで使われるイラストとAI音声で作られた前後編の2Dアニメで、クリエイターは台湾人のエリック・ドゥアン(Eric Duan)。今年7月初頭に公開され、約2カ月間で再生回数は1300万回を超えた。ネット上では主人公の行動や価値観を巡る議論が巻き起こり、実写化を待望する声も多い。一体、どんな作品なのか。
あらすじはこうだ。コンビニの夜勤で働く主人公は、バイク好きで虚栄心が強い。中古ディーラーの口車に乗せられて大型の高級スポーツバイクを借金で購入。ツーリング姿をSNSにアップすると少なからぬ反響を呼び、メッセージを送ってきた女性と付き合い始めるが、甘い生活もつかの間、別の外国人男性に乗り換えられてしまう。
腹いせにSNSで元カノをディスるも逆に笑いの種にされてしまった青年は、バイクのローンや元カノに貢いだ借金の返済、そしてもっと映えるバイクを手に入れるために仕事に打ち込む。その後、勤務先のコンビニで新人の女性アルバイトと出会い、バイクという共通の趣味を持つ二人は仲を深めていくが、青年は浮気のトラウマから女性に疑念を抱き続ける。
一方で、バイクに深刻なトラブルが見つかり、高額な修理費を捻出するため友人にお金を無心するが、身勝手な言動に愛想を尽かされる。あげくには山道で先を走るバイクを追い抜こうとして転倒、対向車のトラックに轢かれて命を落としてしまう……。

© 山道猴子的一生
自分の外見や中身に自信がないからこそ、収入に不釣り合いな高級品やSNSの評価で自尊心を満たそうとする。人間関係をつなぎとめるために金の力に頼る。親身になってくれる味方が周囲にいても、そのありがさたに気が付かない。
こうして自ら人生を台無しにしてしまう主人公の姿は滑稽に映るが、翻って、私たちはどうか。主人公の姿がどこか私たちと重なる点があるからこそ、この作品は多くの共感を呼んでいるのかもしれない。
台湾では主人公の行動に見え隠れする教育や経済格差、ジェンダー問題などをテーマにさまざまな考察記事が投稿され、意見交換が行われている。二次創作やコスプレも登場するなど、ブームはまだまだ続きそうだ。

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