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北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が来週、ロシア極東ウラジオストクでプーチン大統領との会談を計画していると米メディアが報じた。北朝鮮とロシアはそれぞれの理由で軍事協力拡大を進めており、米欧や日本などの懸念が一層強まりそうだ。
米紙ニューヨーク・タイムズは4日、米国や同盟国の当局者らの話として、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が来週ロシア極東ウラジオストクを訪問し、プーチン大統領との会談を計画していると報じた。ウクライナ侵攻を続けるロシアへの武器提供などを話し合うとみられる。北朝鮮とロシアは軍事協力拡大を進めており、米欧や日本などの懸念が一層強まりそうだ。
両氏はウラジオストクで10~13日に開かれる「東方経済フォーラム」に合わせて会談する見通しで、正恩氏がモスクワに行く可能性もあるという。北朝鮮とロシアは即座にはコメントしていない。正恩氏がロシアを訪問すれば、2020年1月末に新型コロナウイルス対策で国境を封鎖して以来、初の外遊になる。
プーチン氏は会談で、長引くウクライナ侵攻ですでに枯渇しているとされる砲弾や対戦車ミサイルの提供を北朝鮮から受けることで合意したい考え。それに対し、正恩氏は核武装を進める中で必要な人工衛星や原子力潜水艦向けの先端技術のほか、ロシアからの食糧支援を望んでいるという。
米ワシントンの政治専門紙ザ・ヒルによると、ロシアのショイグ国防相が7月下旬、朝鮮戦争の休戦協定70周年を記念する北朝鮮の祝賀行事のため平壌を訪れ、正恩氏と面会した際、プーチン氏の親書を渡しており、訪露を打診した可能性がある。
ロシアからの打診を受け、北朝鮮当局は8月下旬、約20人の代表団が平壌からウラジオストクまで列車で移動し、その後、モスクワに飛行機で移動。正恩氏の訪露の下見とみられている。正恩氏は19年4月にも列車でウラジオストクを訪れ、プーチン氏と会談した。
正恩氏とプーチン氏の急接近については、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官が先月30日の記者会見で、ロシアに対して北朝鮮が弾薬などの武器を提供するための協議を進めているとの情報があると明らかにしていた。
カービー氏は、北朝鮮がウクライナ戦争でロシアに軍事支援を提供しないよう警告し、「多くの国連安全保障理事会決議に直接違反する」と指摘。米国は、北朝鮮がロシアの民間軍事会社ワグネルへの武器移転を促進したとして、個人および団体に制裁を課している。
ニューヨーク・タイムズ紙の報道を受けNSCは4日、正恩氏がプーチン氏との〝首脳レベルの会談〟を期待していることを確認。米ブルームバーグによると、NSCのワトソン報道官は、「われわれが警告してきたように、ロシアと北朝鮮の武器供与に関する交渉が進展している」との声明を発表。