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台湾行政院主計総処(統計局)が8月18日、台湾の2023年のGDP成長率予測を発表、GDP成長率2%達成は絶望的であることが明らかになった。行政院主計総処の朱沢民主計長は、世界経済の緩やかな回復に伴い、端末機器の需要が安定することにより、人工知能(AI)向けの半導体の出荷が増加し、輸出が拡大することを期待していると述べた。
2023年の台湾のGDP成長率は2%に達しない見込みで、経済は総合的に見て「外冷内熱」の状況となっている。外需の減少による在庫調整の停滞が影響して、今年のGDP成長率は8年ぶりの低水準となる1.61%に下方修正された。国内のインフレに関しては、北米の豊作の恩恵を受け、食料価格の上昇は緩和すると予測している。
2023年GDP成長率を1.61%に下方修正、インフレは緩和傾向
行政院主計総処は、2023年第2四半期の実質GDP成長率を前年同期比1.36%(7月の推計時は1.45%)、上半期のGDP成長率は-0.98%と発表した。
今後の経済予測について朱主計長は、2023年の通年のGDP成長率は1.61%、1人当たりGDPは3万2105ドル(約466万8000円)、消費者物価指数(CPI)は2.14%になるだろうと述べた。
対外的に大きな懸念材料となっているインフレについて、朱主計長は「大豆、小麦、トウモロコシの国際価格が約20%と大幅に下落し、ウクライナ・ロシア戦争以前の価格に戻っている。北米は好天でトウモロコシが豊作となり、ウクライナの港が封鎖されたことによる食料価格の高騰は回避された。

台湾経済は「外冷内熱」 輸出不振だが国内消費は増加
朱主計長によると、今年第2四半期は世界的に端末機器需要が減少し、サプライチェーンの在庫調整も長期化しているため、台湾の一次産品輸出は引き続き低迷、第2四半期の輸出は米ドル換算で前年同期比16.97%減となった。三角貿易(台湾で受注、域外で生産し最終地へ輸出する)や海運サービスも不調であったが、台湾への観光客数は大幅に回復し、インバウンド需要が経済成長を押し上げた。
朱主計長は輸出について「企業の在庫調整が進まず、投資を減少させているが、今後在庫の消化が進めば企業も補充を始める。在庫も投資プロジェクトであり、景気は好転に向かうだろう」と説明した。
輸出が「外冷」である一方、内需は民間消費が好調に推移し「内熱」が経済の重要な柱になっている。 第2四半期の個人消費の取扱高は前年同期比で3,559億台湾ドル(約1兆6265億円)増加し、このうち国内消費は2,524億台湾ドル(約1兆1535億円)、海外消費は1,036億台湾ドル(約4735億円)増加した。個人消費は実質12.56%増となり、特にサービスに対する消費が伸びた。
朱主計長は、新型コロナ感染症収束後のリベンジ消費が旺盛なこと、株式市場の価格上昇、当局による現金給付、自動車納車台数の急増等により、第2四半期の小売・飲食産業の売上高が増加したと強調した。前年同期比はでそれぞれ12.73%増、36.92%増だという。台湾鉄道、高速鉄道、MRT(地下鉄)、航空会社も活況で、レジャー産業の需要が増加を続けていることを示している。
今年下半期のGDP成長率については、主計総処は第3四半期が2.54%、第4四半期が5.59%と予測している。朱主計長は、今後世界経済の緩やかな回復に伴い、AI(人工知能)向けの半導体の出荷が増加し、輸出が拡大することを期待していると述べた。
訳:椙田雅美