2023-09-06 観光

1471日(丸4年)無上陸記録途絶える―首長の知恵が試される「台風休み」の判断―

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注目ポイント

先週末から今週にかけて台湾南部に台風11号が上陸しました。台湾に台風が上陸するのは実に4年ぶりです。台湾では台風に数字をつけません。アジア名と呼ばれる名前を付けます。この台風の名前はハイクイ(海葵)、つまりイソギンチャクという意味です。台風が近づくと台湾では台風暇(タイフォンジャ:台風休み)が発表されます。台風が来て危ないから仕事や学校は休んでくださいという趣旨なのですが、風や雨がそれほどひどくなかったら若者は映画館やカラオケに行きます。だいたい満席になります。今回はこの台風休みに関する悲喜コモゴモをご紹介しましょう。

4年余り、台風は台湾に来ず

珊瑚、バラ、鷲、象、イソギンチャク、雁、オシドリ…これ、何のことを言っているのかわかりますか?すべて今年発生した台風のアジア名です。アジア名はあらかじめ決まった140個のリストから順番につけられます。昔は米国人女性の名前が付けられていましたが、2000年からアジア名が採用されています。台湾では、日本のように台風10号、台風11号とは呼びません。

2019年8月23日に台湾南部に上陸した台風11号、アジア名BAILU(白鹿)を最後に、長い間、台風は台湾に来ていませんでした。「来ていない」という意味は、台風の中心が台湾本島に上陸していないという意味で、半径が100数十㎞もある台風の強風域・暴風域による豪雨と暴風の被害は毎年ありました。

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台湾に上陸した台風「白鹿」、中国の福建省も備えるため、4万8000人が避難した=2019年8月24日

今年9月3日、4年と11日ぶりに勢力の強い大型の台風11号、アジア名海葵(ハイクイ:イソギンチャクの意)が台湾南東部の台東に上陸し、4日未明、南西部の高雄から一旦台湾海峡に抜けた後、高雄に再上陸し、新竹より南、特に花蓮、台東、高雄、台南、台中に大きな被害をもたらしました。

先週末から台湾で行われているU18ベースボールワールドシリーズは、雨風の中、行われましたが、台中から南の各市は軒並み「停止上班、停止上課」、つまり会社と学校が休みになる「台風暇(台風休み)」になりました。

 

日本にはない台湾の台風休み

「停止上班・停止上課(台風休み)」の判断基準は、中央気象局の予報が4時間以内に暴風域に入る地域の風力が毎秒13.9m以上、又は瞬間最大風力が毎秒28.4m以上の場合です。この予報を受けて各県と6つの直轄市(台北、新北、桃園、台中、台南、高雄)の首長は前日夜7時から10時の間に翌日を台風休みにするかどうかを決定して発表します。判断を間違えると、次の選挙に響きます。当日の午後または夜を台風休みにする場合は、午前10時半までに発表しなければなりません。

行政院人事行政署台風休み状況 

台風休みが発表されると、政府関係機関、公務員、公立私立の各種学校は「天然災害停止上班及上課作業辦法」という法規に基づいて休まなければなりませんが、民間企業や商業施設、店舗などは強制ではありません。でも2000年頃からはほとんどの民間企業が台風休み制度を採用しています。ただ、台風休みは労働基準法に定められた休みではありませんので、当直など当番以外のスタッフが出勤しても違法ではなく、その場合は残業扱いになり、後日、代わりの休みを取ることができるそうです。また、公的機関や民間企業の中には、コロナ禍で学んだ「リモートワーク」をうまく利用して、台風休み発表の前日にはすでに翌日の「在宅勤務・リモートワーク」を決定し、業務が停滞しないような対策を立てているところもあります。

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