2023-09-06 政治・国際

台湾2024総統選 野党陣営一本化は可能か 鴻海創業者・郭氏出馬の波紋

© REUTERS 記者会見で総統選への出馬を表明した鴻海(ホンハイ)精密工業創業者で元会長の郭台銘氏=2023年8月28日、台北市

注目ポイント

来年1月13日投開票される台湾・総統選。電機大手シャープを傘下に従え、米アップルのスマホiPhone(アイフォーン)の組み立て・生産などで知られる台湾の電子機器受託製造大手・鴻海(ホンハイ)精密工業創業者で元会長の郭台銘氏(72)が8月28日、無所属での立候補を表明した。4人による混戦なら与党有利となるため、野党候補の再調整が実現するかどうかが注目されている。

財界人としての実績を強調

これまで、何度も総統選への出馬を噂され、出馬を決めていない段階から台湾各地で集会を開いてきた郭氏。ついに決断した出馬表明会見では、「台湾海峡の平和と安定が不可欠だ。民進党政権のおかげで不安が増している」として、中台両岸関係の緊張の責任は与党・民主進歩党にあると主張。

「台湾に平和をもたらせる、維持できるのは私だけ」と力説し、「私には鴻海をグローバル企業に育てた実績がある。成功を収めた実業家が台湾をマネージメントすることが、台湾の発展につながる。それが時代の趨勢だ」などと自身の財界人としての実績を強調した。

すでに与党・民進党からは同党主席で現職副総統の頼清徳氏が、最大野党の中国国民党からは台湾の自治体で最多人口を誇る新北市長の侯友宜氏が、第三勢力の台湾民衆党からは同党主席で前台北市長の柯文哲氏が、それぞれ出馬の意向を表明してきたが、そこへ郭氏が割って入る姿勢を示したのだ。

 

年齢と世論調査結果が後押し

そもそも郭氏は今年4月、侯氏を推す構えの国民党において、「国民党公認候補を目指す」と名乗りをあげたものの、支持率調査では先行する頼氏に及ばず、侯氏とも大差なかったことから、国民党中央は5月、当初の方針通り侯氏を公認候補に指名。この時は郭氏もフェイスブックで「国民党にとって最良の人選」と祝意を表し、侯氏を支援していく考えを示していた。

© EYEPRESS via Reuters Connect

国民党本部で行われた記者会見で、2024年の総統選に国民党公認候補として出馬することを発表し、演説した新北市長の侯友宜氏=2023年5月17日、台北市

だが郭氏の迷走は今に始まったことではない。郭氏は前回2020年総統選でも出馬が取りざたされ、このときは一時柯氏とも協力し、総統選と同日に投開票が行われた立法委員(国会議員に相当)選には、側近を比例候補に送り込んだが、意見の相違で断念。その後、総統選では当時の第二野党、親民党と協力したものの出馬することはかなわなかった。

目前に迫った2024年総統選でも、国民党や民衆党と調整をしていたが、民衆党はすんなりと柯氏を、国民党も先述の通り多少ごたついたものの結局は侯氏擁立で確定。

前回の総統選で郭氏を応援してきた陣営関係者らは、「確かに侯氏や柯氏とも話をしてきたが、あくまで総統候補は郭氏であるというのが前提で、侯氏、柯氏を副総統候補に、という交渉だった。これでは話は前に進まない。最終的に無所属で出馬するという決断させたのは、72歳という総統選に出るには最後のチャンスの年齢だということと、台湾で毎週のように発表されている世論調査の数字だった」と明かす。

総統選までカウントダウン状態のこの時期、台湾では各メディアが最新の「民調」(世論調査)を逐次発表しており、一部メディアは、「もし郭氏が出馬すれば」という仮定の情勢に関しても調査を実施、発表していた。

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