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中国が「抗日戦争勝利記念日」と定める3日、SNSでは日中戦争と福島原発処理水の海洋放出を絡めて日本に攻撃的な投稿が相次いだ。満州事変の発端となった柳条湖事件の発生日を18日に控え、反日感情のエスカレートが懸念される。一方、英データ分析会社は、中国政府と同国メディアが今年1月から共同で、処理水をめぐる偽情報を拡散していたと報告した。
中国国営新華社によると北京では3日、抗日戦争勝利を記念する座談会が開かれ、共産党中央宣伝部長ら約200人が参加。中央軍事委の幹部や抗日戦争に加わった元兵士らが「反ファシズム戦争勝利の偉大な意義」について話し合った。
北京郊外にある盧溝橋近くの中国人民抗日戦争記念館は、同日から日中戦争に関する新たな展示を開始。子どもの団体が戦争当時の写真などを見ながら館内を回っていた。国営中央テレビは、江西省での関連行事で軍人らがこぶしを上げる場面や山西省で学生が献花する様子などを伝えた。
新華社は日中戦争について「78年前の今日、私たちは勝利した。日本の軍国主義を徹底して粉砕した。全ての中国人が心に刻むべき日だ」と伝え、「歴史を忘れてはならない」と強調した。
一方、英BBCは誤情報対策専門の英データ分析会社「ロジカル」の報告書を引用し、中国政府と国営メディアが共同で、今年1月以降、福島第1原発の処理水海洋放出に関する偽情報キャンペーンを展開していると伝えた。
同報告書によると、その一環として中国の大手報道機関は執拗に科学的根拠をあえて疑問視。特に処理水放出が始まった8月24日以降、中国政府とメディアは誤情報の拡散を加速し、中国人の日本に対する怒りを煽っているという。
ロジカルのデータによると、今年の年明け以降、中国の国営メディアがフェイスブックとインスタグラムに処理水放出のリスクを、英語やドイツ語からクメール語まで複数の言語を使って、有料広告枠で掲載していた。
ロジカルの中国専門家ハムシニ・ハリハラン氏はBBCに対し、「これが政治主導によるものであることは明らか」とし、中国政府関連筋からの誤解を招く誤った内容が世論の反発を強めたと付け加えた。
同社の報告書は、「これは食品の安全性の問題ではない。中国自体、食品の安全性に関し、これまで多くの問題を起こしている」とした上で、「中国の主張は、自らを世界秩序の〝代替リーダー〟として位置づけ、米国とその同盟国は不平等な世界秩序を広めていると主張している」 と指摘。米紙ニューヨーク・タイムズは、中国政府が日本の処理水の放出によるリスクを誇張することで、日本とその友好国を不正行為の共謀者に仕立て上げることをもくろんでいるとの専門家の分析を伝えた。
そんななか、2011年10月に福島第1原発にたまっていた低濃度汚染水を浄化した水を飲んで安全性をアピールした当時、内閣府政務官だった園田康博氏に関して、がんで死亡したとの悪質なデマが中国のインターネット上で拡散した。