2023-09-07 政治・国際

月イチ連載「山本一郎の#台湾の件」第17回:ALPS処理水放出で台湾とご一緒するべきこと

注目ポイント

8月24日に始まった福島第一原発の処理水海洋放出をめぐっては、事前の外交準備を綿密に繰り広げていたにもかかわらず特に中国からの抗議が激しく、日本の水産物全面禁輸措置が発動され、日本の企業や団体には“嫌がらせ電話”が殺到するなど社会に波紋を広げています。他方で、中国は対台湾貿易政策において台湾産マンゴーやパイナップルの輸入停止を突如発表。厳しい状況にある中国経済に対する中国国民の不満のはけ口を、海外に向けるという思惑も見え隠れする一連の問題に、私たち日本と台湾はどう向き合うべきか。山本一郎さんの月イチ連載、最終回です。

 今回のALPS処理水の海洋放出決断については、我が国は外交も原子力政策もおよそ関係するすべての省庁の割とまともな人が肩を組んで然るべき手続きを全部踏んで実施した、ある意味で日本の官僚の全力に近いネタだったんだと思うんですよ。

同じことは、岸田文雄さんがこだわったキエフ電撃訪問や広島G7サミットの成功で日本外交のレガシーとも言える功績が打ち立てられたのは、もちろん総理としての岸田さんの政治観(良い意味で)と、それを支え切った周辺の官僚の実力であったとも言えます。

今回のALPS処理水の海洋放出においても、東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故に関して政治的にけじめをつける一歩としてどうしても必要な事柄であったことは言うまでもなく、本件のために、外交準備はかなり綿密に繰り広げられてきました。

5月の広島G7サミットで環境対策と絡めた福島関連処理も議題に入れ、G7広島サミットの首脳声明において、「①G7は福島第一原発の廃炉の進展と科学的根拠に基づく我が国の取組を歓迎するとともに、②ALPS処理水の安全性を評価するIAEAのレビューを支持する、との文言が盛り込まれ」ています。

我々は、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業の着実な進展とともに、科学的根拠に基づき国際原子力機関(IAEA)とともに行われている日本の透明性のある取組を歓迎する。我々は、同発電所の廃炉及び福島の復興に不可欠である多核種除去システム(ALPS)処理水の放出が、IAEA安全基準及び国際法に整合的に実施され、人体や環境にいかなる害も及ぼさないことを確保するためのIAEAによる独立したレビューを支持する。

ALPS処理水の処分に関する安全対策・風評対策の最近の動向|経済産業省 より引用

さらに、国際原子力機関IAEAの査察を受け入れ、7月にはEU(ヨーロッパ連合)の食品輸入規制の全敗、さらに放出直前にはアメリカ国務長官のブリンケンさんによる「米国は、日本の安全で透明性が高く、科学的根拠に基づいたプロセスに満足している(the United States is satisfied with Japan’s safe, transparent, and science-based process)」と前置きしたうえで、「我々は、日本がIAEAや地域の利害関係者に対して透明性を保ち、関与を続けていることを歓迎する(We welcome Japan’s continued transparency and engagement with the IAEA as well as with regional stakeholders)」と表明しています。


IAEA 福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の放出 多核種除去設備(ALPS: Advanced Liquid Processing System)|IAEA

米国務省、日本のALPS処理水放出を評価するコメントを発表(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ 

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