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ドイツメディアの報道によると、台湾を代表する半導体ファウンドリTSMC(台湾積体電路製造)が50億ユーロ(約7905億円)の補助金を受け、他の3社と合弁で総額100億ユーロ(約1兆5810億円)を投じ、車載半導体工場を建設することになった。
台湾の半導体ファウンドリTSMCは、ドイツから50億ユーロの補助金を受けてドイツ東部ザクセン州ドレスデンに拠点を置き、車載半導体工場を建設すると発表した。投資総額は100億ユーロ超となる予定。 しかし、ドイツの業界関係者は、半導体投資額としては不十分で、短期的には世界で半導体投資競争が激化すると見ている。
TSMCが50億ユーロの補助金を受け、ドイツのドレスデンに半導体工場建設
ドイツの日刊経済紙「ハンデルスブラット」によると、TSMCがドイツ東部の文化、政治、経済の中心地であるドレスデンに工場を建設することがほぼ確実となった。TSMCは、ボッシュ(ドイツ)、インフィニオン・テクノロジーズ(ドイツ)、NXPセミコンダクターズ(オランダ)と合弁会社ヨーロピアン・セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(ESMC)を設立し、共同で工場を建設する。各国が最も関心を寄せているのは、TSMCの工場建設に対する補助金の金額であり、今後の会社運営や生産能力、規模、財務報告における粗利益や純利益に関わる部分である。ハンデルスブラット紙は、ドイツ連邦政府の特別基金「気候・変革基金(KTF)」から50億ユーロの補助金が提供されることになったと報じた。
多額の補助金を受けることが決定し、TSMCは投資額を70億ユーロから100億ユーロに増額した。
今年6月に開催されたTSMCの企業説明会で、同社の劉徳音会長は、320億-360億ドルとしていた2023年の設備投資計画について、下限である約320億米ドル(約4兆6848億円)に近くなと述べた。
世界的な半導体投資競争は短期的には終結しない
今回、ドイツが巨額の補助金を出すことについては批判のも声ある。ハンデルスブラット紙は、ドイツは独自の半導体サプライチェーンを確立するために巨額の代価を支払っており、TSMCだけでなく米国のインテル(Intel)、やウルフスピード(Wolfspeed )にも数十億ユーロの補助金を出していると報じた。
新型コロナ感染症や戦争によってサプライチェーンが寸断した状況で、先進デジタル製品に不可欠な半導体チップの量産を期待した巨額の補助金に、ドイツ政府はこれ以上耐えられないと批判する専門家もいる。しかし、半導体投資は各国間の資金競争となり、すでに底なしのマネー・ピット(金食い虫)になってしまっている。
実際、ドイツを含むEU(欧州連合)全体で、半導体生産関連への補助金は430億ユーロ(約6798億円)に達しているが、オーストリアの半導体チップサプライヤーAT&Sのアンドレアス・ゲルステンマイヤーCEOは、430億ユーロではまだ不十分だとの見解を示し「あと一桁の投資増額が必要だろう。そうしなければ世界の他の地域についていけない」と語っている。
サプライチェーンのリスク分析企業であるEverstream Analyticsの調査データによると、欧州の半導体への投資は、現在までのところ順調に進んでいるが、他地域と比較すると北米は欧州の約5倍、台湾、日本、韓国なども4倍以上の半導体への投資を予定している。半導体投資競争が短期で終わらないことは明白だろう。
訳:椙田雅美