2023-09-01 政治・国際

中国公表の新地図にアジア各国猛抗議 中印国境や南シナ海で領土領海を主張

© GettyImages 習近平国家主席(左端)とモディ首相(右端)

注目ポイント

中国政府は今週、中国の領土や領海を示した新しい地図を公表した。これにインドとマレーシアが自国の一部の領土や領海が中国領として記されているとして猛抗議し、台湾やフィリピン、インドネシアも反発している。

中国政府が新たに作成した地図には、南シナ海の東南アジア各国が主張する領海・領土や、インドとの国境をめぐり係争中の領土が中国の一部となっている。来週のインドネシアでの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議や、インドでの20か国・地域(G20)首脳会議を間近に控えたタイミングで中国はこの新地図を公表しており、各国は中国の姿勢を強く批判している。

特に中国はインドと国境紛争で関係が悪化しており、ロイター通信は、インドがホスト国を務めるG20首脳会議(9月9日~10日)に、中国から習近平国家主席ではなく、李強首相が出席する見通しだと報じた。当初、習氏は同会議に出席するため、ニューデリー入りする予定だったが、中国外務省の汪文斌報道官は8月31日の記者会見で未定だと述べた。

さらに、習主席と李首相のどちらがG20サミットに出席するのかという質問に対し、汪報道官は「今のところ言えることはない」と述べた。インド外務省はコメントを控えた。習主席がG20サミットを欠席すれば、習政権発足以来初となる。

地図に関して、汪氏は「関係方面が客観的で理性的に対応することを望む」と述べた。

地図は自然資源省が同28日に公表したもので、インドのアルナチャルプラデシュ州の係争地が、中国の領土として明確に表示されたことで、インドはこれに強く抗議した。

インドのモディ首相と習氏は先月、南アフリカで開催されたBRICS首脳会議で会談したばかり。そのわずか数日後に中国の新地図めぐって、両国間で国境問題の緊張関係が悪化することになった。

インドのジャイシャンカル外相は、中国の主張は「ばかげている」と一蹴。インド当局者によると、両国が係争中の国境沿いで「迅速な武力衝突の回避と、緊張緩和に向けた取り組みを強化する」ことで合意したばかりだったという。また、同国のマリカルジュン・カルゲ議会議長は「他国に属する領土の名前変更や地図の描き直しに関しては、中国は常習犯だ」と指摘した。

この地図に反発したのはインドだけではない。

英BBCによると、フィリピンとマレーシアは、地図上の南シナ海のほとんどの領有権を中国が主権を主張していることに抗議し、台湾も中国領土の地図に含まれていることに反発した。

フィリピンは同31日、この地図には2016年にオランダ・ハーグの仲裁裁判所が中国主権の主張を退けた南シナ海で係争中の海域が含まれているとして、この地図を「拒否」した。地図には中国の領海としてフィリピンが領有権を主張する南沙諸島などが含まれている。

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