2023-09-01 観光

選挙出馬も媽祖さまのお告げ?―台湾に根付く媽祖信仰とパッポエ―

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注目ポイント

台湾では、重要な決定をしたり、悩みごとがあったりしたらお寺や廟へ行って神様に相談します。三日月形の木片を二つ放って、裏と表が出たら神様のお告げがあったという意味です。これを「擲筊(パッポエ)」と言います。媽祖廟と関帝廟は台湾の庶民から絶大な人気で、神様の誕生日や中元節、旧正月などはどの廟にも非常に多くの人が参拝します。今回は台湾に根付くパッポエ占いと代表的な神様、媽祖と関羽について紹介しましょう。

神様のお告げと出馬の関係…日台の違い

日本では憲法第14条で宗教の自由が保障されていますが、同時に、第20条では国及びその機関が宗教教育その他いかなる宗教的活動を行うことを禁止しています。だから立候補者が国政選挙や地方選挙の前にお寺や神社へ行って、出馬すべきかどうかについて神様・仏様のお告げを聞きに行く人がいるかどうか、筆者は寡聞にして知りません。

台湾では地方・中央を問わず選挙に出馬する際、媽祖や関羽にお伺いを立てます。国のトップを決める総統選挙も然り。手のひらサイズの三日月形の木片を放って神様のアドバイスや許可をもらいます。宗教にタッチしたがらない日本の選挙を見てきた筆者にとって、この習慣にはちょっとびっくりしましたが、よくよく調べてみると、同じ神様を信じている人や信者、廟と強い繋がりがある町の有力者や参拝者からの大きな支持を期待する動機もあるようです。

初めてこれを知った時、筆者は、庶民の生活に宗教が深く根付いていると同時に、日本で見たことがない選挙と宗教のかかわりに新鮮さを感じました。

 

どうやって神様のお告げを聞く?

庶民が商売とか学問とか何かを始めようとするとき、地方議員や立法委員、市長、知事、総統などに立候補する時、結婚、進学、就職など人生の岐路で重大な決定をするときなど、台湾では神様のお告げを聞きにお宮や廟に行きます。みんながよく行くのは台湾各地にある媽祖廟と関帝廟です。

擲筊(パッポエ)

では、どうやってお告げを聞くのでしょうか。台湾にも日本と同じようなおみくじがあります。でも多くの人がやっているのが「擲筊(パッポエ)」です。これは石か木でできていて長さが10㎝くらいの三日月形のものです。三日月二つが一組になっていて、まず、自分の名前と生年月日と住所を名乗った後、「媽祖の神様、~してもいいですか」とか「関羽の神様、~はうまくいきますか」とか質問しながらこれを廟の床に放ります。表と裏(写真左の形)、つまり聖筊(シンポエ)になれば「同意する」「許可する」「それでよろしい」というお告げです。でも、裏と裏(写真真ん中の形)を笑筊(チョウポエ)、表と表(写真右の形)を陰筊(カッポエ)といい、これが出たらやり直します。チャンスは3回までです。パッポエの細かいやり方ややり直しの回数は廟によって少し違いがあるようです。龍山寺や行天宮に行くと老若男女を問わずみんな一生懸命パッポエを放っています。来年の1月に行われる総統選挙で、無所属候補の郭台銘氏も国民党候補の侯友宜氏もパッポエを放って総統選のお告げを得ていたそうです。民進党の頼清徳氏と民衆党の柯文哲氏が、媽祖や関羽のお告げを聞きに行ったかどうか、筆者は知りません。

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