2021-12-07 政治・国際

中国のCPTPP加盟交渉への道はなお険しい -日本とオーストラリアの暗黙の了解を得ずに強行

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注目ポイント

日本とオーストラリア政府の反応から、中国は申請前に少なくとも両国へのあいさつは済ませておらず、両国の同意も得ていないとみられる。これはCPTPP加盟における暗黙のルールに反している。中国は日本とオーストラリアの暗黙の了解を得ておらず、中国のCPTPP加盟交渉への道はなお険しいといえる。

中国がCPTPPで事務局を務めるニュージーランドへ加盟申請書を提出したことは、台湾の政界を震撼させ、台湾もすぐに加盟申請書を提出した。この衝撃の中、アメリカで教員を務める学界の友人から筆者に重要な質問が届いた。「中国はCPTPPの加盟国11か国、特に今年の議長国である日本へのあいさつを済ませたのだろうか?」


これら友人は皆専門家であり、核心をついた質問と言える。CPTPPへの加盟申請書を提出する国は、加盟11か国にあいさつを済ませなければならないという暗黙のルールがあるからである。中国は突然、申請書を提出したが、すでにあいさつを済ませているのであれば加盟交渉はそれほど難しくなく、その進ちょくは台湾をはるかに上回っているといえる。

 

「申請の儀式」という観点から分析すると、中国の申請は「無理やり推し進める」方法であったと思われる。通常は申請国が加盟国へのあいさつを済ませ、全加盟国が歓迎するという暗黙の了解があり、申請国の大臣と議長国(日本)、事務局(ニュージーランド)の大臣が会談し(少なくともオンライン)、加盟の手続きを進める。イギリスは今年2月1日、イギリス、日本、ニュージーランド3か国の大臣によるオンライン会議後、正式にCPTPPへの加盟申請を発表した。


しかし、中国の加盟申請書は3か国の大臣による会議を経ることなく、事務局を努めるニュージーランドに直接、提出された。中国はニュージーランドの担当大臣との電話会議で申請の件を話し合ったと主張しているが、議長国の日本を除外していることから、十分に話し合いがもたれた申請ではないといえる。


さらに、現在中国とオーストラリア間では激しい貿易摩擦が起こっており、中国はオーストラリア産の牛肉、石炭、綿花やその製品に高い関税をかけたり、輸入を禁止したりといった不適切な措置をとっている。実際、中国はCPTPPへの申請書を提出すると同時に、オーストラリアと「オーストラリア産ワインに対する反ダンピング(不当廉売)関税」について協議していたが、最終的に決裂し、オーストラリアはWTO紛争解決手続きの申し立てを行った。


ワインの件で協議が決裂していることから、中国はオーストラリアともCPTPPへの加盟に関する協議を行っていないとみられる。中国のCPTPPへの加盟申請というニュースが発表された時、オーストラリアの貿易大臣が「重要な問題を協議するため、中国とオーストラリア間で大臣クラスの会議が必要だ」と冷ややかに述べたのもうなずける。

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