2023-08-30 政治・国際

処理水海洋放出巡り中国から迷惑電話が殺到 欧米も詳報、中東局はデータ示し安全性伝える

© GettyImages 外務所

注目ポイント

東京電力福島第1原発の処理水放出を巡り、中国側から福島県内など日本国内に迷惑電話が殺到している。岸田文雄首相は「中国発とされる多数の迷惑電話や、日本大使館、日本人学校への投石などが行われている。遺憾なことであると言わざるを得ない」と発言。中国人によるとみられるこれら一連の嫌がらせ行為を欧米メディアも詳しく報道。中東のニュース専門局アルジャジーラはデータを示し、処理水の安全性を伝えた。

警察庁は29日、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出をめぐり、中国からとみられる迷惑電話に関する警察への相談が、28日正午までに47都道府県中31都府県警に、計225件寄せられたと明らかにした。福島県警への相談が最多だという。

処理水が放出された24日以降、苦情や嫌がらせといった内容や、発信元の番号から関連が疑われる相談の件数を集計した。相談者は自治体や学校、飲食店や民間事業者など。警察庁は、不審な番号からの電話には出ないこと、また通信事業者のサービスを使って着信を拒否するなどの対策をするよう呼びかけている。

松本剛明総務相は同日の閣議後の記者会見で、特定の番号からの着信や国際電話を拒否できるサービスへの申し込みを円滑に対応するよう、通信事業者に要請したと明らかにした。松本氏は「被害の発生状況を注視しつつ、関係省庁と連携して迷惑電話対策に取り組む」と述べた。

また、中国江蘇省の日本人学校で25日、卵が投げ込まれたほか、前日には山東省の日本人学校で中国人の男が投石する事件や、北京の在中国日本大使館の敷地内にれんが片が投げ込まれた。

これらについて中国外務省の汪文斌報道官は同日の記者会見で、中国の日本人学校で石や卵が投げつけられる嫌がらせが相次いでいることに関し、「中国は一貫して法に則って、外国人の安全や権利を一貫して守っている」と主張。その上で原因が日本側にあると強調した。

中国人によるとみられるこれらの嫌がらせ行為について、欧米メディアも詳しく報道。米CNNは、「福島からの処理水放出を受けて日本人に向けられたネット上での嫌がらせと辛辣な言葉の波により、日中間の緊張が高まり、日本政府は中国大使を呼び出すに至った」と伝えた。

外務省の岡野正敬事務次官は28日、呉江浩(ご・こうこう)駐日中国大使を外務省に呼び出し、海洋放出が始まった24日以降、殺到する中国発の嫌がらせ電話などの状況が改善されていないとして「極めて遺憾であり、憂慮している」と申し入れた。すると呉大使は、逆に日本国内から同大使館や領事館に大量の迷惑電話がかかっていると主張し、「厳正な(抗議の)申し入れをした」ことを明らかにした。

CNNは、処理水の海洋放出を開始したことを受け、「厳しく検閲されている中国のインターネットは怒りが爆発した」と報道。SNSに投稿された複数の動画は、中国人が日本の企業や事業所などに電話をして、ケータイに向かって「なぜ核汚染水を海洋に放出するのか」などと叫ぶ様子を映し出した。動画のコメント欄では日本企業などの電話番号を共有したり、ユーザー同士が互いにたたえ合っていたという。

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