注目ポイント
中国の不動産大手、碧桂園(カントリー・ガーデン)は8月12日深夜、デフォルト寸前の状態に陥ったため国内債券11件の取引を14日から停止すると発表した。中国の不動産業は中国経済の牽引役であり、世界の鉄鋼メーカーにとって重要な市場の一つであるが、この件が台湾鉄鋼メーカーの今後の業績に影を落としており、今日(15日)は多くの関連企業の銘柄が下落して取引を終えた。
中国市場の影響が強い台湾の鉄鋼業界
このところの碧桂園のデフォルト(債務不履行)危機のニュースで衝撃が走り、その上世界的な経済低迷も追い打ちをかけ、台湾の鉄鋼最大手である中国鋼鉄(CSC)の株価は14日に27.15台湾ドルまで下がり、過去最安値の26.20台湾ドルに迫った。他の鉄鋼メーカーも同様に下落しており、鉄鋼関連株は全面安となっている。
中国の不動産業の状況が、台湾鉄鋼業の将来の方向性に影響を与えそうだ。台湾最大手の中国鋼鉄を例に挙げると、同社の2023年第1四半期の財務報告書では、第1四半期の輸出売上高の割合は45.20%に達した。 輸出先はヨーロッパ28.8%、東南アジア28.8%、日本15.5%、中国8.8%となっている。
同社は、先日行われた収支報告会においても、中国経済の低迷で経営に深刻な影響を受けていることを率直に認めた。今年第1四半期の中国市場では、コロナ禍後の消費回復の波があったものの、力強さには欠けていた。中国の4月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2と好況拡大の目安とされる50を下回っており、重要市場における下流の鉄鋼需要が弱いことが改めて示された。
中国の不動産業界で何が起こったのか
中国の不動産業界は、長年にわたる「過剰融資」問題により、どの企業も巨額の負債を抱えている。これは、中国の不動産開発大手の恒大集団(エバーグランデ)が倒産寸前まで追い込まれたのに続き、また不動産業者がデフォルトの危機に直面しているという構造的問題でもある。 碧桂園は先週、債務問題の悪化により、ドル建て社債2件の利息2250万ドルが支払えなくなる可能性があることを認めたが、14日、再び資金繰りの悪化により国内債券11種の取引を停止した。再開時期は別途定める。
米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、碧桂園は中国最大手の不動産ディベロッパーであり、今回の債務不履行は中国の不動産業界に新たな打撃を与えるだろうと報じた。 現在、碧桂園の負債は2,000億ドルに迫り、もう一つのベンチマークである恒大集団も3,400億ドルに上る負債を抱えており、いずれも中国の住宅市場が不安定な状況であることを物語っている。
実際、近年の景気低迷の影響を受け、中国人の「頭金前払い」能力が劇的に低下しており、碧桂園もキャッシュが減り始め、残高は昨年(2022年)同期比40%にとどまっている。これが碧桂園社の債務不履行の最大の理由であり、中国の不動産ディベロッパーにとって共通のジレンマでもある。