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これからの科学技術について話し合う日台間の国際フォーラム「2023年台日科技対話 新能源與移動科技的國際合作」(新エネルギーとモビリティ技術における国際協力)が8月25日、台北市内で開催された。日本からは自民党前幹事長で同党半導体戦略推進議員連盟会長の甘利明衆院議員らが出席。日台双方の当局や学術、有名企業の関係者らが半導体や水素エネルギー、電気自動車技術などに関して意見を交わした。
この国際フォーラムは、台湾の国家科学及技術委員会(科学技術庁に相当)をはじめ、シンクタンク・台湾日本研究院、超党派の立法委員(国会議員)でつくる立法院亜東国会議員友好協会などが、日台科学技術対話プラットフォームの共同構築を念頭に開催。
気候変動や新型コロナの流行、ロシアによるウクライナ侵攻によって東アジアのエネルギー政策が揺らぐなか、安定したクリーンエネルギーの確保が国家・地域間競争力のカギをにぎるだけでなく、半導体、電気自動車、水素エネルギーの発展を含め、日本と台湾の産業発展に関わる重大な議題だと位置づけており、総統府の林佳龍秘書長(官房長官に相当)や日本台湾交流協会台北事務所の泉裕泰代表(大使)らも出席した。

フォーラムに出席した甘利氏は「経済安全保障と半導体戦略」をテーマに基調講演し、「経済安全保障を一言でいえば経済が武器になるということ」と定義。日本の経済安全保障推進法には「戦略的に自律性を確保し、不可欠性を確立するという2つの柱がある。前者は日本の弱点を洗い出して克服すること、後者は世界にとって日本がなくてはならないという優位性を探し出し、なければ生み出すことだ」などと解説した。
また半導体を使いこなす能力が経済安全保障の鍵をにぎると指摘し、「サプライチェーン(製品の原材料、部品の調達から販売に至るまでの一連の流れ)は同盟国と同志国の間で完結することが必要」だと主張。日本が開発したスーパーコンピューター「富岳」を例に挙げ、「富士通と理化学研究所が設計した(半導体)チップを製造しているのは(台湾の)TSMC」であると、TSMC製造能力の高さにも言及し、この分野での日台連携を強調した。

この日あいさつした行政院副院長(副首相)の鄭文燦氏も「台湾と日本は今後も半導体、新エネルギー、5G、電気自動車などの分野で協力を続けていく」と展望。台湾日本研究院の李世輝理事長も「経済安全保障が国際政治経済の潮流となったいま、半導体を中心としたサプライチェーン問題や水素エネルギーを中心とする新エネルギー問題は今後も大きな課題を提示し続け、台日間の科学技術対話の必要性を示してゆく。台日関係が新たな段階に入ったことを象徴している」などと持論を展開した。