注目ポイント
台湾は製造業に偏重し、非製造業とイノベーションの不足が課題である。他国と比べて製造業利益が過剰であるが、経済全体の成長が遅い傾向がある。政府は賃上げを検討し、経済の多様性を大切にする方策が求められている。低コスト志向は長期的なイノベーションを阻害する可能性があり、バランスの取れた経済政策が必要だ。
製造業の繁栄が非製造セクターの低迷を招き、台湾の経済成長とイノベーションを阻害
文:Roy Ngerng (鄞義林)
台湾は、経済成長の偏りが製造業に過度に集中しており、非製造セクターの利益を奪い、イノベーションの欠如を引き起こしている。
台湾の経済は、ほかの先進国と比較して、製造業の利益が非製造業の利益と連動して成長していない異常な状態にあるといえるだろう。低コストの製造に焦点を当てる一方で、経済の多様性とイノベーションの面で大きな損失が生じている。
他の先進国では、製造業の利益と非製造業の利益は同調して成長する傾向がある。しかし、台湾は製造業の成長が極端で、その利益は急速に増加している。それにもかかわらず、国内総生産(GDP)の成長率は遅く、経済全体のバランスが崩れているといえる。
台湾政府の賃金抑制政策によって製造業は利益を上げているが、一方で非製造業の成長が阻害されている。他国も製造業の賃金を抑制しているが、台湾ほど極端には行っておらず、台湾の経済成長を著しく妨げている。
その経済の不均衡は深刻で、製造業の利益が急増している一方で、非製造業の利益や賃金、家計消費、経済全体の成長は遅れている。台湾政府の賃金抑制政策は正当化の余地が少なく、非製造業を傷つけ、賃金を抑制されている労働者や台湾の経済成長にも悪影響を及ぼしている。

低賃金による台湾政府の方針は過度に行き過ぎており、非製造業の成長を奪い、台湾の経済とイノベーションの発展に損害を与えている。台湾政府は賃金の引き上げによって、経済成長とイノベーションを促進する新しい戦略を模索する必要がある。そうすれば、賃金増加によって経済とイノベーションの潜在力を発揮できるものと見込める。
台湾の低コスト製造は、経済の多様性とイノベーションの低下をもたらした。経済複雑性は国の複雑な製品開発能力や多様性、革新性、生産性を測る指標である。しかし、台湾は貿易においては高い経済複雑性を持つが、技術と研究の複雑性においては大きな課題がある。
台湾の技術複雑性は先進国のなかでももっとも低く、革新的で多様な技術革新の能力が不足しているといえる。同様に、研究複雑性も低く、革新的で複雑な研究が不足している。台湾の独自で、革新的かつ突破的な特許は少なく、特許の価値が低いために特許の更新も低い水準のままだ。



台湾政府は賃金抑制の過度な手法を見直し、経済の多様性とイノベーションを奨励する方針を採るべきだ。台湾は半導体製造に特化しており、低コストと賃金抑制に焦点を当てているが、これは他のセクターの資金とリソースを奪い、革新を妨げているということを認識すべきであろう。
