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南アフリカ・ヨハネスブルクで開かれていたブラジル、ロシア、中国、インド、南アによる新興5か国(BRICS)の首脳会議は24日に閉幕。枠組み拡大のため、サウジアラビアなど6か国を新たな加盟国として迎え入れることで合意。欧米主導の国際秩序に対抗する形で、世界的な影響力の拡大を図る。
ブラジル、ロシア、中国、インド、南アによる新興5か国(BRICS)の首脳は24日、イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアを加盟国として迎え入れると明かした。
南アフリカの最大都市ヨハネスブルクで3日間開かれたBRICS首脳会議の最重要課題は、加盟国拡大の是非だった。南ア政府などによると、新加盟に興味を示しているのが約40か国。そんななか、中国が主導し、他の加盟国との意見調整を続けていた。
世界最大級の産油国サウジに加え、UAEは大きな資金力があり、人口が1億人を超えるエチオピアとエジプトはアフリカの主要国で、南米の主要国アルゼンチンについてはブラジルが強く加入を後押ししていた。また関係者は、核兵器開発をめぐり欧米と対立するイランを、BRICSのありようを示す意味であえて加盟させたとみる。
BRICS首脳会議が今回、新たなメンバーの加盟を決めたことで、将来的な拡大に向けて一定の結果を残した。これまで正式な加盟申請は23の国と地域から出されていた。
会議を終え、現地で記者会見に参加した中国の習近平国家主席は、加盟国拡大の実現は「歴史的だ」と称賛。同氏は自身が提唱している「グローバル発展イニシアチブ(GDI)」を実施するため、中国は近く100億ドル(約1兆4500億円)の基金をスタートさせると明らかにした。具体的な開始時期などには触れなかった。
米紙ワシントン・ポストはBRICS首脳会議が中国にとって地政学的に極めて重要な意味を持つと指摘する。
それを阻むのが日米韓の存在だ。米キャンプデービッドでは先週末、中国の目と鼻の先にある日本と韓国、そして米国の同盟関係深化を表明した。これを受けて中国国営新華社通信は社説で、米国の「覇権を取り戻すための必死の努力だ」と表現。BRICS首脳会議出席のため今年2度目の外遊となる南アを訪れた習氏にとって、欧米主導とは異なる世界秩序を構築することが中国の重要な役割だとしている。
実際、今回の首脳会議にはBRICS5か国の首脳(ロシアはプーチン氏の代わりにラブロフ外相が出席)のほか、60か国以上の首脳らがオブザーバーとして出席。ワシントン・ポスト紙は、このブロックの拡大は中国にとって、「より包括的な世界観」を実現する絶好の手段になると解説した。
陳暁東・駐南ア中国大使は、同ブロックが「新興国と発展途上国間の協力のための重要な基盤」であり、「国際的な公平性と正義の根幹」であると説いた。また、別の中国当局者は匿名で英紙フィナンシャル・タイムズに、「BRICSを世界のGDPに占める割合をG7と同等に拡大すれば、世界におけるわれわれの集団的な発言力はさらに強まる」と語った。