2023-08-23 ライフ

日本とも台湾とも深い縁がある「バービー」―バービーランドはリアル社会の裏返し―

© Getty Images for Warner Bros.

注目ポイント

バービー人形は実は、日本とも台湾とも深い縁があります。台湾でも3~40年くらい前から裕福な家庭を中心に、バービー人形で遊ぶ子供が現れました。女性の社会進出が進んでいる台湾でこの映画は多くの支持を集め、観客動員数は順調に伸びています。完璧だったバービーが自分の異変に気付き、人間社会に飛び込んで完璧な自分を取り戻そうとするストーリーは現代の世相を反映し、見る人に一種の感動さえ与えます。映画の中に散りばめられた色々なパロディーを見つけることも楽しみのひとつです。筆者は昭和のおじさんですが、エンディングの場面でほんの少し泣きそうになりました。

バービー人気、ミッションインポッシブル超えか?

今年の夏、台湾でも上映が始まった米映画「バービー(中国語「芭比」)」。若くないおじさん(筆者)が短パン穿いて映画館で「バービー」を見てきました。チケットを買うときにちょっと勇気が要りましたが、結構男性客もいて、台湾ではこの映画は人気があることがわかりました。今季の「ミッションインポッシブル」に並ぶほどの人気があるとのこと、海外ではすでにミッションインポッシブルを超えている国もあるほど、大成功をおさめた映画です。

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米映画「バービー」

ネタバレになるので詳しくは言えませんが、冒頭部分のバービーのトレーラーは「2001年宇宙の旅」にそっくりな映像だったり、バービーの生みの親であるルース・ハンドラーがバービーに紅茶を入れてあげるシーンでは、ミケランジェロ「アダムの創造」に描かれているように、ルースとバービーの手が触れ合ったりします。神が最初の人間に命を与える瞬間です。このように劇中にはパロディーがたくさん散りばめられており、それだけでもかなり惹き付けられますが、日本人や台湾人には馴染みがなくて見つけるのがちょっと難しいかもしれません。

筆者は昭和生まれの田舎の男性ですから、当然バービーやリカちゃんなどのお人形で遊んだことはありません。しかし、映画を見ていると、バービーにはまっていた世代にとってはたまらないだろうなということはわかります。バービー人形が入れてあるピンクの箱そのものがバービーハウスになること、ウンチをするタナ―という名の犬、ハイヒールを脱いでもかかとが上がったままの足(不完全さ)、ひざ、ひじ、首、腰が曲がるタイプのバービー人形、ジェンダーを超えた様々な職業のバービー(完璧さ)などなど、枚挙に暇がないほど往年のバービーファンにとって懐かしい場面がこれでもかというほど迫ってきます。だから、というわけでもありませんが、この映画は特にバービーファンの女性たちにだけウケる映画だと思っていました。でも、エンディングまで見ると、見る人によっていろいろなテーマを感じることができる深い映画だということがわかります。だから、男女を問わず全世界で最多の興行収入を記録する映画になったのです。

 

日台中韓バービー人気の比較

映画「バービー」は、公開からわずか17日で世界の興行収入累計が10億ドルを突破、ワーナーブラザーズ映画史上最速のペースで売り上げを伸ばしていきました。

しかし日本では、その人気に水を差す騒動が起きました。原爆開発者「オッペンハイマー」を描いた映画が同時公開され、バービーとそのオッペンハイマーの画像が7月下旬頃からX(旧ツイッター)に多数投稿されるようになりました。バービーの髪をきのこ雲に加工したりして不謹慎な投稿が続きました。この騒動でバービーは出鼻をくじかれ、日本での公開3日間の興行収入は1.9億円、ランキング8位という低調な滑り出しとなりました。

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