2023-08-22 政治・国際

北朝鮮軍、兵士の栄養失調対策でイヌ肉約束 食材調達命令も予算ゼロで軍幹部に自腹強要

© AFP via Getty Images

注目ポイント

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が、戦略巡航ミサイルの発射訓練を視察する姿を同国メディアは21日に報じた。核武装が着々と進む中、北朝鮮軍は栄養失調が蔓延する兵士たちの食事事情を改善し、暑い夏を乗り切るため、イヌ肉の調達を軍幹部たちに命じたと米国の国際放送局ラジオ・フリー・アジアが伝えた。ただし、予算はゼロで、全ては幹部の自腹だという。

北朝鮮メディアは21日、金正恩朝鮮労働党総書記が、朝鮮人民軍海軍の東海(日本海)艦隊に所属する第2水上艦戦隊を訪れ、戦略巡航ミサイルの発射訓練を視察したと伝えた。日時は報じていない。金正恩氏が乗船した新型とみられる警備艦の写真も公開した。

発射訓練は成功したとしている。公開された写真では、警備艦は相手のレーダーが捉えにくいように船体の外壁が平らに設計され、ステルス性能が高まったとみられる。視察や写真公開は、海上戦力の能力が向上していることを誇示する目的もあるとみられる。

そんな中、国民の約3割が従事する北朝鮮軍では、兵士の栄養失調が常態化しているとされ、暑い夏を乗り切るため、軍は幹部に〝精力がつく〟とされるイヌ肉の調達を命令。米国の国際放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、ただし、予算が無いため、調達費用は全て幹部たちの自腹だという。

金正恩政権は国家予算の15.9%を軍事費に歳出(2023年度)。ただし、その相当分が核開発を中心とした軍備に割かれている。そのため、RFAによると、収穫した農作物のかなりの部分を軍に割り当てているものの、兵士たちの食糧事情は劣悪で、自力で食料を調達することを余儀なくされている。

今月初め、朝鮮人民軍総参謀部と並んで国防省より強大な権限を持つ総政治局は、夏の最も暑いこの時期を乗り切るため、「何としても人民軍兵士に健康的な食料を提供するよう指示した」と北朝鮮北部・咸鏡道(かんきょうどう)の軍関係者がRFAに匿名を条件にそう漏らした。

「タンゴギジャン(イヌ肉シチュー)は精がつく食事として提供されることが約束された」と説明。部隊の中で各部門の幹部3人が、食料を分割して部隊の60~120人の兵士らに「毎日イヌ肉シチューを用意するよう命じられたが、予算は一切与えられなかった」という。

「幹部の中には家でイヌを飼っていない者もいる。だから市場で(イヌを)買わなければならない」とし、「今のところ(イヌ肉シチュー用の)食材は供給されておらず、さまざまな口実で負担が幹部らにかかっている。そのため幹部たちの生活は困窮している」と訴えた。

その関係者によると、市場では体重12キロのイヌの値段は20万ウォン(約3500円)。だが、幹部らの月給は2500~7000ウォン(約34円~120円)。「とてもイヌを買うカネはない」と強調。「幹部らとその家族は、軍当局が兵士に健康的な食事を提供せよとの命令に憤りを感じている」と明かした。

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