2023-08-22 政治・国際

台湾・総統候補の外遊相次ぐ夏 米国に加え日本を重視する背景とは

© GettyImages パラグアイ訪問の経由地・米サンフランシスコで、ホテル前の台湾民衆にあいさつする頼清徳副総統(中央)=2023年8月16日

注目ポイント

2024年1月に迫った台湾の総統選は、与党・民主進歩党の頼清徳副総統、最大野党・中国国民党の侯友宜新北市長、第三勢力・台湾民衆党の柯文哲前台北市長の3人による激しい前哨戦が展開されており、夏の外遊は外交姿勢や手腕のアピールのしどころだ。頼氏の訪米、侯氏と柯氏の訪日から垣間見える総統選への外遊の影響を探ってみた。

現副総統とAITトップの会談に中国反発

台湾の総統選まであと半年。与党・民進党の頼清徳副総統、最大野党・国民党の侯友宜新北市長、第三勢力・民衆党の柯文哲前台北市長の3人による激しい前哨戦が展開されているのに加え、鴻海精密工業の創業者、郭台銘氏も出馬の意欲を示しており、流動的な面も残している。日本の国会議員による台湾訪問ラッシュの現状については既報の通りだが、この夏は台湾の総統候補3人においても外遊ラッシュとなった。

このうち頼氏は8月中旬に台湾との正式な外交関係を維持するパラグアイを訪問。同国のサンティアゴ・ペニャ新大統領から「外交関係の維持」表明を受けるなど成果をあげた。また往路、復路ともに米国を経由。

復路に米代表機関の米在台協会(AIT)トップと会ったことなどに対し、中国はすぐさま反発。台湾海峡周辺で対抗措置を思わせる軍事演習を展開するに至った。

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パラグアイ訪問の経由地・米サンフランシスコで、ホテル前の台湾民衆にあいさつする頼清徳副総統(中央)=2023年8月16日

 

野党候補ら相次ぎ訪日「民主、自由…海峡の安全守る」

一方、頼氏を除く2候補は今夏の外遊先に日本を選び、柯氏は6月上旬に、侯氏は7月末から8月初めにかけ、それぞれ訪日を果たした。

台湾の総統の職務は、結局のところ外交と中台両岸関係と国防の3つに集約される。

「だから外交的手腕の有無は、正式な外交関係を維持する国が13カ国にまで減少(蔡英文政権発足時は22カ国)した台湾の総統選において、非常に重視される。台湾のすぐ隣にあって歴史的つながりも深く、米国と同盟関係にある日本との関係強化は、もちろん総統選に大きく影響する」と国民党の関係者は解説する。頼氏外遊後の20日には台湾と外交関係を持つグアテマラの大統領選が実施され、親台派候補がやぶれており、波乱含みだ。

7月末から日本を訪れた侯氏は、国民党の総統候補としては2007年の馬英九氏(後に総統=2008~16在任)以来の訪日で、滞在中は自民党の麻生太郎副総裁、萩生田光一政調会長ら自民党幹部とも会談した。

また、台湾との関係強化をめざす超党派議員グループ・日華議員懇談会も「新北市長を囲む会」と題した朝食会を開催し、自民党のみならず、立憲民主党、日本維新の会の国会議員も姿を見せた。

出席した国会議員の一人は「日本と台湾の間に正式な外交関係はないものの、『台湾有事』が取りざたされる中、重要なパートナーだといえる。自民党だけではなく野党にも親台派の議員は数多くおり、従来『父親が親台派だったから』という2世議員が少なくなかったが、昨今は世襲ではない若手国会議員の参加も目立ち、時代の変遷を感じた。また、侯氏があいさつの中で『台湾の民主と自由を堅持する』『対話を通じて台湾海峡の安全を守りたい』と語っていたのが印象的だった。侯氏は総統選の有力候補。その肉声でこうした価値観を共有するというアピールが聞けたのは、とても有意義だった」と話す。

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