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中国恒大集団に続き、中国では大手不動産の深刻な経営悪化が相次いでいる。同国の不動産大手・碧桂園は先週、今年1~6月期の純損益が最大550億元(約1兆1000億円)の赤字になるとの業績予想を発表した。米紙ニューヨーク・タイムズは、デフォルト危機に直面する同社の経営危機が、なぜ中国経済全体を脅かすのかを解説した。
ニューヨーク・タイムズ紙は碧桂園がどのようにして危機に陥ったのかをこう分析した。
1年前まで碧桂園は、無謀な借入で経営不能に陥った不動産会社が相次ぐ中、模範的な企業だった。
1992年に楊国強氏が創業した碧桂園は、世界最大の不動産ブームの恩恵を受けて成長し、楊氏は億万長者となり、国の目覚ましい成長の証となった。中国人は利殖のために信頼できる選択肢がほとんどないため、不動産に投資した。他の不動産開発会社大手と同様、碧桂園は借入を続け、融資返済のためにさらに借り入れをすることも多く、事業が拡大し続ける限り、債務を返済し続けることができるとの想定に基づいて経営のかじを取った。
ところが、支払い額があまりに膨れ上がり、政府当局はその債務がより広範な金融システムを脅かすのではないかと懸念し始めた。習近平国家主席は、「住宅は投機のためのものではなく、生活のためのものであるべき」と指導。2020年に政府が取り締まりを強化したことで、不動産会社の資金調達能力が制限され、債務不履行が相次いだ。
その結果、多くの不動産開発業者が債務不履行に陥る中、碧桂園は完成前にマンションを売却し、その資金を運営資金に充てることで自転車操業に転じた。だが、今年の住宅販売の低迷で、同社は「創業以来最大の危機」に直面している。
この問題が21年に破綻し、世界市場にパニックを引き起こした恒大集団の二の舞になるのでは、という懸念につながっているという。中国専門の調査会社ガベカル・リサーチの不動産アナリスト、ロザレア・ヤオ氏は同紙に、「碧桂園のデフォルトは恒大集団と同様の大きな影響力を持つ可能性がある。なぜなら、その規模が非常に大きいからだ」と語った。
さらに、市場はより悪化する可能性がある。いくつかの大手不動産開発企業はすでに債務不履行に陥っている。そのため市場は恒大が破綻した時よりもさらにピリついているというのだ。行政当局は住宅市場を支援すると明言しているものの、信頼感を高めるには十分ではない。
「政府が反応する前に事態はさらに悪化するかもしれない」とヤオ氏は指摘する。
ニューヨーク・タイムズ紙は、中国当局が碧桂園を救済することは〝おそらく〟可能だという。
政府はこれまでもマンション購入を容易にするために金利引き下げを約束するなど、あらゆる手段を講じてきたが、これまでのところ住宅不況を好転させるほどの結果は出ていない。住宅市場も90年代から00代初頭に中国の大部分を都市化した不動産バブルの頃のような成長はもうない。