注目ポイント
「恋人の日」といえば日本なら2月14日のバレンタインデーが定番だが、台湾には1年にいくつも「情人節=恋人の日」が存在する。きたる旧暦7月7日の七夕(今年は8月22日)は「真夏のバレンタインデー」といったところか。「七夕情人節」と呼ばれ、恋する人へプレゼントする文化がすっかりと根付いた。
日本では七夕が近づくと七夕飾りをして星に願いをかけるように、台湾では旧暦7月7日の七夕に、子どもの健康や安全を祈願してきた。
七夕は子どもの守り神である七娘媽(織姫)の誕生日で、幼児のいる家庭では同じく7月7日に生まれ幼児の守り神とされる床母をまつり、紙幣を模した紙銭(冥銭)を燃やして神様に献げるという伝統がある。そんな七夕が、恋する人に贈り物をする七夕情人節(恋人の日)としても楽しまれるようになったのは2000年代以降といわれている。
真夏のバレンタインも定番は「バラ」
この連載で何度もご紹介している通り、台湾の花の価格は日本に比べて高い傾向にあり、平均給与が日本より低い台湾で花を贈ることは金銭的に難しい現実があるが、それでもこの時期には、私が台北で経営する花屋にも注文がよく入る。
2月14日のバレンタインデー(西洋情人節)と同様、最も人気の花材はバラだ。仕入れ値が通常の5倍から10倍ほど高騰する2月と比べると穏やかだが、それでも七夕には通常の2倍から3倍ほどになることもあり、赤いバラは特に高値になりやすい。最近は台湾産より大きく長持ちしやすい輸入バラが人気で、私も市場で新しい色を見つけては仕入れ、花保ちをチェックしたり、売れ行きを調査したりしている。
バラと組み合わせるのにぴったりな、かすみ草のような小花もプレゼントの定番だ。旧暦の7月7日といえば新暦では決まって8月で、台湾は灼熱の季節。夏の暑さに耐えられずほとんどの花は3日から1週間もすれば枯れてしまうが、小花ならドライフラワーにしやすく、バラが枯れてしまっても飾っておけるのも魅力だ。

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プレゼントの予算は控えめ
1年間に何度もある「恋人の日」の中で、台湾人が最もプレゼントにお金をかけるのは2月のバレンタインデーだろう。台湾全土がバレンタインムードになり、花屋だけでなく百貨店や飲食店も大々的なキャンペーンを実施する。旧正月が近く、財布の紐が緩みやすいことも影響しているかもしれない。
かたや七夕は、ホワイトデー(白色情人節)や5月20日(「520」の発音が「我愛你(愛している)」と似ていることから新たな恋人の日として定着しつつある)と同程度か、それ以下しか予算をかけない人が多い印象がある。
暑さを警戒してか、花に割く予算は2月のバレンタインと比べれば半分ほど。ただ、その分高価なブランド品や化粧品、ケーキやお酒などを花と一緒に贈っているようだ。

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失敗した「日本の七夕」イベント
親日国として知られ、日本文化に関心がある人が多い台湾だが、「日本の七夕」を知っている人はそれほど多くない。実は私の花屋でも、大きな笹や願い事を書く紙とペンを準備し、来店されたお客様に日本の七夕を紹介するイベントを行ったことがある。だが、「なぜ願い事を紙に書いて笹に飾るのか?」と不思議がられてイベント的成功には遠く、天の川をイメージした商品や笹を使った商品も販売してみたが、購入してくれた方はごくわずかだった。