2023-08-16 政治・国際

手記公開した中国で拘束続く豪ジャーナリスト 〝国家機密〟めぐる不透明な容疑で長期拘留

© GettyImages ジャーナリストのチェン・レイ氏

注目ポイント

〝謎の逮捕〟から3年。中国で、国家安全法違反で拘束されているオーストラリア人ジャーナリスト、チェン・レイ氏が先週、今の胸中を明かした手記を公開した。同氏は非公開裁判を受けたものの、判決の言い渡しもなく、拘束されたままだ。中国では多くの言論人らが「国家機密」に関するあいまいな違反容疑で長期拘留されている。

国家安全法違反の容疑で中国に拘束されているオーストラリア人ジャーナリスト、チェン・レイ氏(48)が逮捕されてから3年。同氏は初めて手記を公開し、その中で年間わずか10時間ほどしか太陽の光を浴びることができず、「太陽が恋しい」と訴えた。

中国国営の英語ニュースチャンネル「中国国際電視台(CGTN)」の著名ニュースキャスターだったチェン氏は2020年8月、国家機密を他国に漏洩した疑いで拘束された。だが、逮捕理由については「秘密」とされ、昨年、非公開法廷で裁判が行われたとされるが、判決は言い渡されていない。

逮捕後、初めてとなるチェン氏のメッセージは、面会で訪れたオーストラリア領事館員がチェン氏の口述を筆記したもので、「2500万人へのラブレター」と題され、チェン氏のパートナーが先週公開した。

手記では、「独房には窓から日光が差し込むが、その中に立つことが許されるのは年間わずか10時間だけ」と説明。10歳でオーストラリアに移住したチェン氏は、「この3年間、木を見ていない。ハイキングや川、湖、泳いだ海岸やピクニック、奇抜な色の夕日などを思い出し、以前車で行った場所の名前を密かに口に出している」とつづった。

また、オーストラリアで祖母と暮らす11歳と14歳の子供たちに触れ、「何よりも恋しいのはわが子」と手記を結んだ。

中国には国家安全法の違反容疑で拘束されているオーストラリア人がもう1人いる。中国系の作家ヤン・ヘンジュン氏だ。湖北省出身のヤン氏は2000年代前半に豪州に帰化。19年の逮捕前の約2年間は米コロンビア大学の客員研究者だったとされる。

ヤン氏は逮捕から約2年半後の21年5月、非公開裁判の初公判に出廷し、起訴容疑を否認した。その後、拘束中に体調を崩し、深刻な状態とされるが、関係者はヤン氏が釈放される見込みはないとしている。その後、判決公判は何度も延期されている。

米非営利組織「ジャーナリスト保護委員会」によると、チェン氏が逮捕された20年、中国では47人の中国人ジャーナリストらが拘束されており、世界全体で拘留されているジャーナリスト274人の中で、中国は最も多かった。英BBCは、中国では〝国家機密〟は当局者がそうとみなすものは何でもあり得ると指摘した。

突然の拘束リスクは言論人だけではなく、外国企業関係者も同じだ。

カナダ人アナリストのマイケル・コブリグ氏と同コンサルタントのマイケル・スペーバー氏は、カナダが18年12月、米政府の要請により、対イラン経済制裁に違反して金融機関を不正操作した容疑で、中国の通信機器大手ファーウェイの孟晩舟(もう・ばんしゅう)CEO(最高財務責任者)を逮捕したことに反発した中国当局により〝国家機密に関する容疑〟で拘束された。

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