2023-08-20 ライフ

樹木はこの島の語り部  人と木々との関係

注目ポイント

「ご搭乗の皆様、この便は間もなく桃園国際空港に到着いたします。現在の気温はさわやかな24℃、ちょうど春の花が咲き始める季節です。台湾各都市の街路樹も現在模様替え中で、さまざまな色合いで都市の通りを彩っています。観光の合間に、春と夏の新たな装いをご覧ください。また、台湾の樹木の物語をご用意していますので、この旅で台湾の樹木に関する視野を広げていただき、台湾のより豊富な姿に触れていただければ幸いです」

文・鄧慧純 写真・林格立 翻訳・山口 雪菜

マンゴーはオランダ人が持ち込んだものだが、それから長い歳月がたち、すでに台湾の景観の一部となっている。

はるか昔の1624年、オランダ人が海から大員(現在の台湾)に上陸した時、彼らの目に入ったのは山一面を覆う緑の樹木だったに違いない。今日、桃園国際空港から台北市内へ向かう際にも、バスであれ空港MRTであれ、両側に広がる緑に誰もが目を奪われることだろう。台北市内に入れば、道路沿いの緑豊かな街路樹やグリーンベルトに気付く。中山北路はフウの並木で知られ、中正紀念堂のある愛国西路には原生種のアカギが並んでいる。仁愛路沿いはクスノキが四季を通して緑をたたえている。大稲埕の慈聖宮で台湾料理を食べれば、廟の広場にはガジュマルの緑陰が広がっている。こうして歩いてくるだけで、台湾の平地の四天王――ガジュマル、クスノキ、アカギとフウに触れることができる。

コガネノウゼン

 

四季の風景

街路樹は都会の人々をいやしてくれる。気温を調節し、空気を浄化し、環境の快適性を高め、また騒音を吸収し、水を涵養してくれる。もちろん都市の景観を美しくしてくれることも重要だ。四季によって姿を変える樹木もあり、その変化に多くの人が魅了される。

民族植物学を専門とする屏東科技大学森林学科の楊智凱助教によると、樹木の四季の変化は視覚上の饗宴であるだけではない。原住民の人々は植物の変化によって季節の移り変わりを知ってきたそうだ。『番社采風図』には「番に年歳なく、四時を弁えず、刺桐(デイゴ)の花が開くを一度とする」とある。つまり原住民族は外の環境を観察して、植物の姿で時の変化を知り、それを歳月の流れの依拠としていたということだ。

デイゴの開花は新たな一年の到来を告げる。赤い花が春の訪れを知らせてくれ、集落の人々は新たな一年の種まきを始める。東部のアミやプユマの人々は褐色のケガキが実ると夏の訪れを知る。秋を知らせるのはタイワンモクゲンジだ。一年を通して緑の葉を伸ばすモクゲンジが樹冠に黄色い小花をびっしりと開く。それがしだいに赤い蒴果に変わり、褐色になって枝から落ちるため「四色樹」と呼ばれる。楊智凱によると、原住民の年配者はタイワンモクゲンジの花が咲き、また台風警報が発せられると、山の上にいる仲間を呼び戻す。秋の台風は破壊力があり、安全を確保する必要があるからだ。「年配者は植物の開花を見て、また周囲の情報と結び付けて季節を知るのです。これは原住民族の知恵です」

タイワンモクゲンジは四季折々に色を変えるため、西洋でも愛される樹木となり、「世界の亜熱帯の名花木」にも収録されている。台北市の敦化南路と忠誠路にはこの木が街路樹として植えられ、美しい並木を形成している。

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