注目ポイント
屏東県霧台郷に住むルカイ族の宋文生は、若くして公務員の職を棄て、年長者に伴われて山林に分け入り、台湾固有種の樹木の植樹に携わる道を選んだ。過去40年間、植樹、伝統的な狩猟場・山林を保護整備することに一心不乱に力を注いできた。宋とその家族の私心を捨てた正義感に満ちた感動的な物語に触れる時、私たちは、自らが身をおく環境を大切にする気持ちを奮い立たせ、不毛の土地を緑化させることで、世界を動かすこともできるという信念を固くするだろう。
宋文生一家の植樹の物語は、ソーシャルネットワークで公開されると反響があり、宋は、屏東県霧台郷愛郷発展協会を設立し、月額100元で木一本を育てられる里親制度を開放した。里親には米国人、フランス人がおり、こうした里親は多くはないが、幸いなことに、台南社区大学の受講者たちが山に登り、草むしりや力仕事を分担してくれている。
山腹の入り口には、植えられたばかりの若い苗木があり、地面の立て札には、共同保護者の名前が記されている。ドレセドレセによれば、植樹する土地、財源、人材が不足しているという。年間3000本の木を育てる里親がいれば、財源が得られ、より多くの人に植樹の仲間入りをしてもらえ、霧台で失われた600ヘクタールの山林が復元できる。
ドレセドレセは、自分たちが山林復元の仕事に専念できたのは神に選ばれたからだと信じている。「神様は、私たちができると確信していたからこそ、私たちを選んだのです。私が天国に召された後も、少なくともこの木々は引き続きこの土地に残って、私たちの子孫を守ってくれるでしょう」と言う。
宋文生の一族は、大母母山系の3か所の植樹区、合計約100ヘクタールの山林に、アラカシ、タイワンケヤキ、フウなど1万株近くの苗を植えて来た。山を下りる前に、宋は、山中の樹木を指差しながら「私は天国からお呼びがかかるまで、ここを離れることはありません」といい添えた。
現代フランスの文学者ジャン・ジオノのベストセラー小説『木を植えた男』は、名声、財産、見返りを求めず、残りの人生を植樹作業に捧げ、不毛の地を人々が心安らかに暮らし、働くことができる緑の珠宝とでも言うべき庭園に変えた孤独な羊飼いの姿を描いている。その無私の精神によって、荒れ果てた土地は、乳と蜜の流れるカナンの地に変えられた。この本に、世界中の何千万人もの人々が心を動かされた。
台湾版の「植樹する男」である宋文生と妻のドレセドレセは、山林への愛を台湾を守るという行動に移した。そして、我々も心の中に「山林を守る」という苗木を植え、山林と土地を愛する心を行動に移すべきなのである。




転載元:台湾光華雑誌