2023-08-13 ライフ

人と森とのハーモニー 植樹を夢みる者 宋文生

注目ポイント

屏東県霧台郷に住むルカイ族の宋文生は、若くして公務員の職を棄て、年長者に伴われて山林に分け入り、台湾固有種の樹木の植樹に携わる道を選んだ。過去40年間、植樹、伝統的な狩猟場・山林を保護整備することに一心不乱に力を注いできた。宋とその家族の私心を捨てた正義感に満ちた感動的な物語に触れる時、私たちは、自らが身をおく環境を大切にする気持ちを奮い立たせ、不毛の土地を緑化させることで、世界を動かすこともできるという信念を固くするだろう。

文・郭美瑜 写真・林旻萱 翻訳・笹岡 敦子

台湾は、全土の約60%が森林で覆われ、北回帰線が横断しており、熱帯と温帯の両方の気候帯に位置し、4000メートル近い標高差があるため、豊かな森林景観を形成している。1912年、イギリスの探検家ウィリアム・ロバート・プライス(William Robert Price)が台湾を訪れ、阿里山のヒノキ林を見て、「世界にかくも素晴らしい森があるとは!」と驚嘆した。

日本統治時代、クスノキや高山の貴重なヒノキが伐採され、国民政府が台湾に来てからも、林業経済によって木材で多額の外貨を獲得した。その反面、森林資源の減少や土石流などの潜在的な国土保全の危機にも直面していく。1989年、政府は一級天然林の伐採禁止を宣言した。1991年、天然林は全面的に保全され、台湾の緑豊かな山林の負担を低減し保護育成が可能となった。

以後30年以上にわたり、政府、企業、非政府組織は、森林復元事業に相次いで投資してきた。2018年、林務局が推進する国土生態系エコロジカル・ネットワーク・プロジェクトは、標高ゼロメートルから3952メートルまでの分断された生態系ネットワークをつなぎ、生態系保全の持続可能な発展に向けて前進するために、原住民集落と山林を共同管理する計画を立てた。2022年「人と森林の持続可能なウィンウィン経済」を推進する33の山村を選定し、林務局各林区管理処によって、集落において森にやさしい産業を発展させる支援が行われることになった。民間は、森の里親、または土地取得後の信託などにより、森林資源を幅広く育成する仲間に加わっている。

現在、苗栗県南庄のサイシャット族は、林務局と山林を共同管理し、地元の林区管理処と協力してサイシャット族による養蜂、原木椎茸の植菌、エコツーリズムなどSATOYAMAイニシアティブを展開し、人間本位・協力共生の精神を実践している。

国立屏東科技大学森林学科教授の王志強によれば、日本政府と国民政府は林業経済の発展において時代ごとの経済的ニーズがあったが、一部の原始的な山林は開発に適さず、生態系復元育成は、場所と植生に応じて行って、初めて水土保全・生物多様性の維持が可能になると言う。

屏東県霧台郷のルカイ族神山集落の一員である宋文生(スラ・スキナドリミSula Sukinadrimi)とその父・宋文臣(レゲイ・スキナドリミLegeay Sukinadrimi)は、40年前に家族の力で100ヘクタールの霧台郷の山林の生態系を復元すべく、一万株を超える台湾固有種木のタイワンケヤキ、アラカシ、フウ等を植えてきた。2018年、宋文生は、林務局から林業および自然保護功労者として表彰された。

宋文生と妻ドレセドレセ・パチェンゲラウは、両親の理念を受け継ぎ、霧台郷の山林に台湾固有種の復元に取り組んでいる。植えた苗木が、両親の家の裏にあるこの樹齢50年の大クスノキのように、高く強く育つことを願う。
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