注目ポイント
コロナ禍3年余の停滞を取り戻すかのように国会議員らの夏の外遊が相次いでいる。中でも今年は台湾を訪問するケースが突出して目立つ。ロシアのウクライナ侵攻に加え、覇権主義的姿勢を強める中国など日本を取り巻く安全保障環境が、経済も含めて急激に変化したことを印象付けているが、同時に「安近短外遊」は諸物価高騰や円安で海外旅行が縁遠くなった国民感情を意識している面もあるようだ。
「安倍元首相の後を狙う人には、台湾訪問は絶好のアピールの場」と田村氏は話す。
現在台湾と正式な外交関係を維持しているのは計13カ国で、中南米や太平洋の島しょ国などが中心だ。
「日本のようなG7の国会議員が訪台してくれることは、台湾の外交にとっても大きなPR効果がある。麻生氏が台湾のWHO加盟にまで言及してくれたことは心強い」(台湾当局高官)一方で麻生氏の講演には中国が早速、反撃に転じるなど、日台双方の世論にもざわつきが生じた。
田村氏は、「私も麻生氏と一緒に台湾の関係先に同行したこともあり、昔から講演したような話をあちこちでしています。いわば信念のようなことを講演でしゃべったら、あまりにも反響が大きかったということでしょう」と推測しつつも、「ただ、あの内容だと、いざ台湾有事があれば日本が台湾を助けにきてくれると…、そんな風に受け止めた報道も現地ではあると聞きます。現状『専守防衛』の日本の自衛隊が、台湾にまで出て行って戦うことはできません。そんな訓練もシミュレーションもやっていない。麻生氏クラスの大物議員がああいった発言をすると、台湾や国際社会に誤解を与えかねないという危惧も生じる」と田村氏は懸念を吐露した。
日本の臨時国会は9月下旬からの予定。「国会議員訪台ラッシュ」はこの後もしばらくは続きそうだ。
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