2023-08-13 政治・国際

国会議員「訪台ラッシュ」の背景に「国民感情」配慮もチラリ 「安全保障」「半導体」の向こう側

© 李登輝元総統の墓参をした麻生太郎氏(中央)。李元総統の次女、李安妮氏(右)らと=2023年8月7日 新北市

注目ポイント

コロナ禍3年余の停滞を取り戻すかのように国会議員らの夏の外遊が相次いでいる。中でも今年は台湾を訪問するケースが突出して目立つ。ロシアのウクライナ侵攻に加え、覇権主義的姿勢を強める中国など日本を取り巻く安全保障環境が、経済も含めて急激に変化したことを印象付けているが、同時に「安近短外遊」は諸物価高騰や円安で海外旅行が縁遠くなった国民感情を意識している面もあるようだ。

相次ぐ訪台に台湾側はうれしい悲鳴

「日本からの先生方の訪問は本当にたくさん。うれしいことですが、同時に大変でもあります」と笑顔で話すのは、台湾当局の高官だ。日本では通常国会が終了し、秋の臨時国会まで事実上の「夏休み」状態となったため、コロナ禍3年の遅れを取り戻すかのように国会議員による外遊が相次いでいる。

中でも今年は台湾訪問がラッシュ状態で、迎える台湾側も大わらわとなっている。

直近では8月7日から9日まで、元首相でもある自民党の麻生太郎副総裁が同党の国会議員2人を帯同して台湾を訪問した。

8日に台北市内で開催されたフォーラムでの講演では、「台湾海峡を含むこの地域で戦争を起こさせないこと。強い抑止力というものを機能させる覚悟が求められている。戦う覚悟です」「いざとなれば使うという明確な意思を伝えることが抑止力になる」などと強い言葉を発し、日台のメディアが大きく報道。中国側がこれに反発した。

麻生氏は同日、頼清徳副総統に続き、蔡英文総統とも会談したが、蔡総統とは台湾有事への危機感を共有し、安全保障面での日台間の連携や邦人保護問題に対処する必要性なども確認。加えて来年1月の台湾の総統選に関し、麻生氏は「台湾の人が、どういう人を、次の大統領に選ぶか分かりませんけれども、しかるべきちゃんとしたものを選ばないと、急に中国と手を組んでもうけ話に走るとかいうことになると、台湾というものの存在が危なくなりますから、そういった意味では次の人を育ててもらいたいね、という話を蔡英文総統には申し上げました」と、報道陣に語った。

© GettyImages

 総統府で蔡英文総統(右)と会談した麻生太郎自民党副総裁=2023年8月8日 台北市

 

安倍元首相夫人、昭恵氏訪台にも議員ら同行

この麻生氏に先立って台湾を訪れたのは、昨年7月に銃撃事件で他界した安倍晋三元首相の夫人、昭恵氏だ。

安倍元首相は生前、台湾重視の姿勢を打ち出していたことから台湾社会での知名度や人気は突出しており、没後間もない昨年9月には有志によって南部・高雄市内に銅像も建立されたほどで、昭恵氏は納骨前の7月17日から20日に台湾を訪問。18日に高雄で銅像を視察し、19日には頼清徳副総統、蔡英文総統と相次いで会談するなどした。

安倍元首相の銅像前で記念撮影する夫人の昭恵氏(前列右から4人目)や同行の国会議員ら=2023年7月18日、高雄市(吉村剛史撮影)

昭恵氏は議員ではないが、山谷えり子参院議員、北村経夫参院議員、杉田水脈衆院議員、原田義昭元環境相らも同行し、銃撃で訪台がかなわなかった安倍元首相に代わっての訪台団という印象を台湾社会に残した。

他にも日本維新の会の馬場伸幸代表が8月1日~3日に台湾を訪問。これとは別に日本維新の会、立憲民主党、国民民主党の3つの野党訪問団も台湾を訪れており、「国会議員の訪台ラッシュ」という表現はけっして大げさではない状態だ。

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