2021-12-06 政治・国際

新型コロナウィルスが野生生物の繁殖を促し ニューヨークが「環境保護の都市化」に成功?

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注目ポイント

新型コロナウィルスの影響で、アメリカ各地の動物園や水族館、植物園等が深刻な被害を受け、閉館や来場者数の制限を余儀なくされている。しかし、そんな状況下においてもこれらの機関は、依然として絶滅危惧種の保護・保全活動を行っており、同時に野生生物の違法取引撲滅に努めている。

新型コロナが生態系改善につながる?

数年に渡って生態系保護計画に成功


2020年ニューヨーク市の新型コロナウィルスのロックダウン期間において、緑地と自然生態系が繁栄し、多くの野生動物が再び見られるようになった。


「ニューヨークタイムズ」によると、1970年代から国立公園管理官になり、現在ブルックリン植物園のディレクターを務めているエイドリアン・ベネペ氏は次のように述べている。

「私は公園で育ちましたが、今まではハト、ネズミ、リスしか見たことがありませんでした。アカオノスリやハヤブサ、ハゲタカ、ましてやアライグマ等、今までに見たことがありませんでしたが、今やニューヨークはハゲタカがいたる所におり、今年の冬には、市街地の様々な所で公園上空から獲物を狙っている光景が見られました。これは都会の野生生物界では特異な光景と言えます」。


コウモリ、絶滅危惧種のチョウや野生及び稀少なミツバチなど、ニューヨーク市の在来の野生生物や昆虫達が、驚異的な速さでその数を増やしている。セントラルパークではコヨーテ、スタテン島ではビーバー、サラマンダー、ヒョウガエル、ブロンクス区ではベンガルヤマネコ、ミンクやキツネなど。絶滅危惧種のニシンやアメリカウナギまでもがブロンクス川で泳いでおり、そのすぐ側では腹をすかせたミサゴと白鷺が身を潜め狩りに備えている。


ハドソン川沿いの埠頭には、大きな野生のカキと小さなタツノオトシゴが現われ、クイーンズには世界で最も絶滅の危機に瀕しているウミガメとアザラシが現われた。ブルックリンには何十年も見られなかった外来種の昆虫も発見された。


ニューヨーク市のオーデュボン協会の最高経営責任者であるキャサリン・ヘインズ氏もこう話す。「ニューヨークは今や地球上で最も環境に優しい大都市です」と。そして、同時に誰もが新型コロナウィルスのロックダウンによって動物達が帰ってきたと言うが、そうではなく、これは実際にはニューヨーク市がこの40年をかけて公園、川、森林、湿地を浄化し緑地を拡大するために努力した結果だ、とも。具体的には多くの種類の植物を植えたり公園での農薬の使用を禁止したり、数十億ドルをかけゴミの埋め立て地や、工業荒れ地を自然保護区に変える努力をしてきた。だが、公園に与えられた予算は低く、それは多くの生態学者や関係者にとっても懸念事項であり、排水システムの劣化と維持要員の不足は、動物の自然生息地に脅威を与えていた。


「ニューヨークタイムズ」はまた、非営利団体New Yorkers for Parksの最高責任者であるアダム・ガンサー氏の主張も伝えている。それは、ここ10年来、公園を保護・維持するための資金が市の総予算に対して他都市では2%~4%なのに対し、ニューヨーク市では0.6%程度を維持し続けてきたということだ。


ニューヨーク市長選挙で、民主党のエリック・アダムス候補は、この予算を1%に増やすことを公言し、それに対し共和党のカーティス・スリワ候補は2%にまで引き上げるとした。このような動きは、今後大きな変化を生み出すだろう。

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新型コロナ流行が生態系保全計画に衝撃を与え、

資金繰りに奔走する各国政府

 

アメリカでは動物園や水族館、植物園などが、閉館の憂き目に遭っている。それでも絶滅危惧種の保護・保全活動などを続けている。


今年3月、アメリカ上院は今年最も重要な法案の一つである2021年アメリカ救済計画(アメリカン・レスキュー・プラン)を可決した。この法案は、新型コロナウィルスで打撃を受けた人々や企業を支援することに加えて、下院天然資源委員会の委員長とアリゾナ州議員のラウル・グリハルバ氏の推進活動のもと、野生生物とその病気の研究のために9,500万ドルをアメリカ合衆国魚類野生生物局に割り当てるというものだ。そのうち3,000万ドルは絶滅危惧種法リスト内の動植物を保護するために、そして新型コロナウィルスの影響により大幅な収入減を強いられた動植物保護機関に使用されることになる。


「ニューヨークタイムズ」は、動物園及び水族館協会(AZA)のCEOであるダン・アシェ氏のコメントをこう報じている。「何十年もの間、動物園、水族館、科学センター及びその他の施設は、絶滅危惧種の保護・保全のために連邦・州・自治体の野生動物局の職員と協力してきましたが、資金不足は度々起きています。この資金は、動物園と水族館が連邦政府と協力して絶滅危惧種を救うために行った取り組みに対するものであり、同時に新型コロナウィルスの打撃を受けつつもその活動を続ける人たちへのものです」。


アメリカだけでなく、多くの国や組織も新型コロナウィルスが流行している間、野生生物を保護し続けることに尽力している。


今年8月、世界で最も影響力のある国際自然保護連合(IUCN)、欧州委員会、アフリカ・カリブ海太平諸国機構(OACPS)も、保護地域管理と絶滅危惧種への影響を軽減させるべく600万ユーロの緊急救援基金を提供した。「ユーロニュース」によると、世界自然保護連合のブルーノ・オーバール局長は次のように指摘している。「この新型コロナウィルスの流行は、生態系保護計画の脆(ぜい)弱さを示しています。新型コロナウィルスにより、野生生物を保護する組織の存続が難しくなったことで、多くの絶滅危惧種が更なる絶滅の危機にさらされています」。


違法伐採と密猟の増加の裏に生活困窮者の影が


多くの国では、新型コロナウィルスが流行する中での旅行を制限し、自然保護区を閉鎖している。豊かな国の都市では、この制限により道路上の車両数が減り、大気汚染が少なくなり、野生生物の数の回復や繁殖するための環境を整えることにつながった。しかし一方で、貧しい国々の農村地域では経済不振による食糧不足が起こり、一部の人々は住む家すらもなくし、密猟事件も次々と発生している。


「ABCニュース」は、ニューヨーク市野生動物保護協会会長のジョセフ・ウォルストン氏の次のような話を紹介している。「私たちが目にしているのは、何百万人もの人達が突然失業し、頼れるものが何もない悲惨な姿です。例えば、東南アジアでは多くの人々が都心部から農村に再移住しています。彼らは一夜にして都心部での仕事を失い、密猟や違法伐採、その他の自然生態を破壊して生計を立てる以外の選択肢がないのです」。


野生生物司法委員会によるとアフリカ各地やカンボジアのジャングルで違法な密猟が急増しているが、アフリカの農村部の人々は衣食に困り、密猟をせざるを得ないという現状だ。


「BBCニュース」も、アメリカの非営利環境団体(コンサベーション・インターナショナル)のマイケル・オブリエン・オニェカ氏の談話を報じている。「新型コロナウィルスのロックダウン期間中、仕事に行けない人々ばかりでした。特に、違法な市場で働く人々は、毎日の生活のために仕事に行き、その日稼いだお金で食べ物を持ち帰るという日々でした。例えば、農村部に住んでいる少年はバイクに乗り、乗客を運んで初めてお金を稼ぐことが出来ますが、ロックダウン中ではそれすらも出来ないのです」。


昨年4月の野生動物正義組織の報告によると、新型コロナウィルスにより国立公園の閉鎖を余技なくされた後、法執行機関はウィルス対策を重点に置くようになった。そのせいで森林警備隊によるパトロールが減り、なおかつ観光客も依然少ない状況下は、密猟者にとっての好条件がそろったともいえそうだ。


「BBCニュース」によると、野生動物正義組織のサラ・ストーナー氏はこう述べている。「私たちが得た情報によると、南アフリカの密猟者が現状をうまく利用して、さらに密猟を拡大・加速させようとしているようです」。


クルーガー国立公園やその他の保護地域でホテルを運営するエコツーリズムグループのシンギタ氏も「違法な密猟が大幅に急増している」と話した。また、野生生物保護部門のゼネラルマネージャーであるインゲ・コッツェ氏は「保護区域への不法な侵入は急激に増加しており、3月末にはピークに達しました」。


人間による自然破壊は、多くの野生生物を危険にさらすだけでなく、もともと動物の体にのみ存在していたウィルスが、人間に感染することにも繋がる。SARS、AIDS、エボラ出血熱などを含む新しい感染症の70%は野生生物からの感染である。


世界経済フォーラムの専門家であるマリー・キニー氏は「過去50年間で、野生生物の60%が失われ、それと同時に新しい感染症の数が2倍に増えました。生態系の破壊と新たな感染症の急激な増加が同時に起こるのは偶然ではありません。動植物の自然生息地が減少し、野生生物と人間の距離がこれまでになく近づいています。商業利益を得るために不法に伐採をしたり、密猟をする人もいれば、一方で社会の底辺においやられ、生きるために仕方なくそれをする人たちもいます。いずれにせよ、私たちはあまりにも多くの自然の生態系を破壊しすぎてしまいました」と「BBCニュース」の取材に答えている。


原文作者:吳宗宜
原文責任編集者:羅元祺
原文校閲者:翁世航
翻訳者:黄群儒
校閱者:TNL JP編集部