注目ポイント
新型コロナウィルスの影響で、アメリカ各地の動物園や水族館、植物園等が深刻な被害を受け、閉館や来場者数の制限を余儀なくされている。しかし、そんな状況下においてもこれらの機関は、依然として絶滅危惧種の保護・保全活動を行っており、同時に野生生物の違法取引撲滅に努めている。
新型コロナが生態系改善につながる?
数年に渡って生態系保護計画に成功
2020年ニューヨーク市の新型コロナウィルスのロックダウン期間において、緑地と自然生態系が繁栄し、多くの野生動物が再び見られるようになった。
「ニューヨークタイムズ」によると、1970年代から国立公園管理官になり、現在ブルックリン植物園のディレクターを務めているエイドリアン・ベネペ氏は次のように述べている。
「私は公園で育ちましたが、今まではハト、ネズミ、リスしか見たことがありませんでした。アカオノスリやハヤブサ、ハゲタカ、ましてやアライグマ等、今までに見たことがありませんでしたが、今やニューヨークはハゲタカがいたる所におり、今年の冬には、市街地の様々な所で公園上空から獲物を狙っている光景が見られました。これは都会の野生生物界では特異な光景と言えます」。
コウモリ、絶滅危惧種のチョウや野生及び稀少なミツバチなど、ニューヨーク市の在来の野生生物や昆虫達が、驚異的な速さでその数を増やしている。セントラルパークではコヨーテ、スタテン島ではビーバー、サラマンダー、ヒョウガエル、ブロンクス区ではベンガルヤマネコ、ミンクやキツネなど。絶滅危惧種のニシンやアメリカウナギまでもがブロンクス川で泳いでおり、そのすぐ側では腹をすかせたミサゴと白鷺が身を潜め狩りに備えている。
ハドソン川沿いの埠頭には、大きな野生のカキと小さなタツノオトシゴが現われ、クイーンズには世界で最も絶滅の危機に瀕しているウミガメとアザラシが現われた。ブルックリンには何十年も見られなかった外来種の昆虫も発見された。
ニューヨーク市のオーデュボン協会の最高経営責任者であるキャサリン・ヘインズ氏もこう話す。「ニューヨークは今や地球上で最も環境に優しい大都市です」と。そして、同時に誰もが新型コロナウィルスのロックダウンによって動物達が帰ってきたと言うが、そうではなく、これは実際にはニューヨーク市がこの40年をかけて公園、川、森林、湿地を浄化し緑地を拡大するために努力した結果だ、とも。具体的には多くの種類の植物を植えたり公園での農薬の使用を禁止したり、数十億ドルをかけゴミの埋め立て地や、工業荒れ地を自然保護区に変える努力をしてきた。だが、公園に与えられた予算は低く、それは多くの生態学者や関係者にとっても懸念事項であり、排水システムの劣化と維持要員の不足は、動物の自然生息地に脅威を与えていた。
「ニューヨークタイムズ」はまた、非営利団体New Yorkers for Parksの最高責任者であるアダム・ガンサー氏の主張も伝えている。それは、ここ10年来、公園を保護・維持するための資金が市の総予算に対して他都市では2%~4%なのに対し、ニューヨーク市では0.6%程度を維持し続けてきたということだ。