2023-08-11 政治・国際

マクロン仏大統領、米中対立に警鐘 - 小国主権を脅かす新帝国主義に懸念

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注目ポイント

「インド太平洋地域に新たな帝国主義が生まれつつある。」 マクロン仏大統領は27日、バヌアツでの演説でこのように警告した。 マクロン大統領はどの国とは明言しなかったが、米中間の競争がますます過熱するなか、フランスはインド太平洋地域で発言権を得ようと画策しているようだ。

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領が南太平洋諸国や地域を歴訪し、7月27日にバヌアツの首都ポートビラで演説した。マクロン大統領は演説の中で「インド太平洋地域、特にオセアニアでは新たな帝国主義が台頭しており、権力志向がいくつかの小さく脆弱な国の主権を脅かしている」と批判した。主権を脅かす国については明言しなかったが、インド太平洋地域における米中競争が激化する中で、フランスの独自の姿勢を示す発言とみられる。

米国のロイド・オースティン国防長官とアントニー・ブリンケン国務長官も相次いでインド太平洋地域を訪問したが、要人3人が同時期に訪問したことが、まさにこの地域の地政学上の問題を浮き彫りにしている。

マクロン大統領は「現在の世界情勢はインド太平洋地域の主権と独立を揺るがしており、外国船による違法操業や、債務の罠がこの地域の発展を阻害している」、「我がフランスのインド太平洋戦略は、我が国と協力する意思を持つ地域内のすべての国の独立と主権を守るため、パートナーシップに何よりも重点を置いている」と述べた。

マクロン大統領は、どの国が「新たな帝国主義」なのかについては明言しなかったが、IMF(国際通貨基金)によれば、中国輸出入銀行は太平洋島嶼(しょ)国におけるインフラの主要な貸し手であり、バヌアツに対する最大の債権国となっている。

 

中国に対抗? 米国がパプアニューギニアに巡視船を派遣

 マクロン大統領はバヌアツに続き、パプアニューギニアを訪問したが、オースティン米国防長官もパプアニューギニアを訪問してジェームズ・マラペ首相と会談した。両国間の防衛協力について協議するととともに、パプアニューギニアへの軍事的支援を強化すると発表した。米海軍沿岸警備隊の巡視船が早ければ8月中にパプアニューギニアに寄港する。両国は今年5月、防衛協力協定(DCA)を締結している。

米国は沿岸警備隊を配備してインド太平洋地域での影響力拡大を図っているが、 中国と密接な関係にあるソロモン諸島とバヌアツは、米国沿岸警備隊の寄港を拒否している。2022年に中国がソロモン諸島と安全保障協定を締結し、太平洋における米中の対立が表面化した。 米国は対抗策として今年3月、過去30年間閉鎖していたソロモン諸島の大使館を再び開設すると発表した。

 

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ブリンケン米国務長官:ニュージーランドがAUKUSに参加する扉は開かれている

 オースティン米国防長官と同時期にブリンケン米国務長官も、インド太平洋地域を訪問、トンガ王国、ニュージーランド、さらにオーストラリアを歴訪、オーストラリアでは米豪両軍により実施された史上最大規模の軍事演習を視察した。

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