注目ポイント
フィリピン軍は6日、南シナ海のアユンギン礁(英語名セカンド・トーマス礁)で5日に同軍拠点に兵員交代と物資補給のため近づいたチャーター船のうち1隻を中国海警局の艦船が、放水砲を使って妨害したとし、強く非難するとの声明を発表した。米日豪など西側はフィリピンへの支持を表明し、米国は米比相互防衛条約の発動事案になると中国をけん制した。
今回の一件について専門家やフィリピンの政治家らは、今年2月の中国船によるフィリピン船舶へのレーザー照射や、シンガポールの海洋安全保障の専門家コリン・コー氏が「一触即発」と呼んだ中国船による一連の危険な接近などの威嚇行動から一段ステップアップしたものだとの見方を示した。
コー氏は「明らかに、今回の事件は事態のエスカレーションを表している」と指摘。フィリピンのアラン・ピーター・カエタノ上院議員はCNNフィリピンに対し、「われわれは瀬戸際外交の時代に入っている」とし、「何か問題が起きれば、地域に大きな不安定をもたらす」と訴えた。
一方、中国海警局の報道官は6日、SNSで「フィリピンの補給船2隻と沿岸警備隊の船2隻が中国の南沙諸島の仁愛礁に隣接する海域に不法侵入した」と強調。同海域の諸島と南シナ海における中国の領有権を改めて主張し、同地域内での「法執行活動を継続する」と明言した。
パシフィック・フォーラムの海洋安全保障部長で東京国際大学助教授のジェフリー・オーダニエル氏は、中国政府は同氏が「グレーゾーン」戦術と呼ぶもので、米国の攻撃を誘発する兵器使用の一歩手前の行動を継続することが予想されると分析。
オーストラリアの米国研究センターのブレイク・ヘルジンガー研究員は、中国政府に対する国際的な非難は抑止になるとしながらも、フィリピンは国際社会からの支持を求めるだけでなく、それ以上のことを行う必要があると述べた。
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